「金ちょうだい」飲み代欲しさに強殺未遂 少年に道を誤らせた母親の「正論コントロール」
■小学生で「ものごと考えるのやめた」
ただ、この臨床心理士によると、子供の非行は親を試すSOSのサインでもある。まずは気持ちに寄り添って話を聴くという向き合い方が望ましいが、それをせず正論で押さえ込んでしまうと、子供は「助けを求めても無駄」「悪いのは自分」と思い込む。被告の場合は、小学生のときに「ものごとを考えるのをやめた」という。
もちろん母親の行動は、子供を立派に育てたいという気持ちの表れだった。非行に悩んだ母親は子供との接し方を学び、事件前にも建設業で働く少年に毎日のように連絡し、褒め、励ますなどして支えていた。
しかし、結果的に事件の引き金となったのは、やはり「正論」を伝えた母親のLINE(ライン)のメッセージ。手元の金を使い切り、4日間ほぼ水だけで過ごした少年は、友人との飲み会だけは行こうと、給料を管理する母親に「働いた金を渡して」と頼んだ。
母親は浪費を懸念し「現実を見つめて。遊びたいのは分かるけど、もう大人なんやで」などと突っぱねた。その後事件は起きた。
■母親「本当に大事」少年「嫌いやけど、好きです」
「(幼い頃から)間違ったメッセージを送って傷つけ、大人への信頼を奪ってしまったのかな。本当に大事に思っているということだけは伝えたい」。法廷で声を震わせた母親に対し、少年は別の日の公判で「お母さんは嫌いやけど、好きです」と複雑な心情をにじませ、こう応じた。「僕はここから変わっていくしかない。頑張るんで、お母さんは自分の人生をみて幸せになってほしい」
13日の判決公判で、伊藤寛樹裁判長は犯行に影響した少年の性格が「成育歴に根ざしているとうかがわれる」と指摘した。「殺意があったと認定できる」として強盗殺人未遂罪の成立を認めつつ、「母親や心理士らと接見を重ね、反省を深め、成長しようとする様子も見て取れる」と述べ、懲役9年(求刑懲役14年)を言い渡した。(西山瑞穂)