静岡県がJR東海と「空港新駅」の対話へ…中身のない「いい加減な計画」になる最悪の予想
巨額の費用を負担という障壁
ことし6月7日のリニア沿線知事による「期成同盟会」で、山梨県の長崎幸太郎知事が「リニア建設を契機とした総合的な高速交通の将来像」研究会報告をとりまとめた。 そこで静岡空港新駅の可能性に言及した。14年前の小委員会での川勝知事の主張とほぼ同じである。 反リニアの姿勢を貫いた川勝知事は「リニアは静岡県には何のメリットもない。デメリットだけである」などとして、JR東海に「誠意を示せ」と何度も繰り返した。 「誠意」すなわち、静岡県のメリットが静岡空港新駅を実現させることだったことは内部資料等で明らかである。 川勝知事が「誠意」を求める根拠もあった。 リニア沿線の各県が建設の円滑な推進のために全面的に支援する代わりに、JR東海は地域振興となる各県駅を全額負担することを決めていたからだ。 JR東海は品川―名古屋間の中間駅の建設費用3300億円を想定していた。 このため、川勝知事は、神奈川、山梨、長野、岐阜の4駅を単純に割って、80 0億円程度が「誠意」だと何度か口にした。 実際は、地下駅の神奈川県駅に2200億円、他の3駅が1駅350億円程度とJR東海は試算している。 「350億円」であれば、静岡空港新駅の待避線あり450億円、待避線なし250億円に近い額とも言える。 川勝知事は、静岡空港新駅を地元負担の請願駅としながらも、実際は、建設費用を「静岡県のメリット」としてJR東海に回すことを見込んでいたのだろう。 副知事時代に空港新駅建設を検討したという難波喬司・静岡市長が「現在ならば700億円程度」と発言しているから、もし建設となっても、この巨額費用の負担が問題になるのは確実である。
新駅を設置することは可能なのか
いまのところ、いつから、「対話」が始まるのかわからないが、当然、静岡県はJR東海の示すいろいろな課題を聞くところから始まる。 静岡県は空港新駅の設置可能性調査を行い、技術的に可能としている。 静岡県の可能性調査では、空港ターミナル直下を貫通する高尾第一トンネル内に新駅を設置して、約300メートル離れた高尾第二トンネルの間に広場を設けて駅への入口と考えたようだ。 カーブ等がないから技術的に問題ないとしているが、毎日300本の新幹線が通るトンネル内の工事の難易度は非常に高い。 そもそも静岡県内の新幹線駅はすでに6駅(熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松)もあり、「これ以上、新駅をつくれば新幹線のスピードが出せなくなる」などとJR東海は新たな新駅設置は不可能だとしていた。 それでも石川知事は空港新駅設置で県内の利便性のみを優先してこだまに固執していた。 静岡、掛川間は所要時間14分であり、その中間に新駅をつくれば、減速は避けられず、新幹線の意味が失われる。 JR東海が「聞く耳」を持たなかったことも十分に理解できる。 一方、川勝知事は、空港新駅は災害時や海外からの賓客などを想定して停車すれば問題ない、常時停車する必要はないとしていた。 しかし、それでは新駅の管理運営費用を静岡県が負担しなければならない。 石川、川勝両知事の発言を見れば、本当に新駅設置を真剣に考えていたのか疑われても仕方ない。 また「約700億円」(難波市長)とされる建設費用が大きな問題となる。 リニア小委員会で川勝知事は請願駅としたが、空港新駅の設置を要望する静岡県が建設費用を全額負担する腹積もりだったのかわからない。 新幹線の請願駅として、掛川、新富士が新駅として設置された。すべて地元の負担である。掛川駅の場合、企業も少なく、ほぼすべての市民が新駅設置で寄付をするなど街を挙げて、新駅設置に協力した。 もし空港新駅設置で進んだとしても、牧之原、島田、吉田の3市町を中心に地元負担を求める声が高まれば、「新駅不要」の声が圧倒的となるかもしれない。