店内で「リモート会議」を始めて顧客情報が筒抜けに…人はなぜスタバを「仕事場」にしてしまうのか
地方民にとってスタバは憧れの店
それにしても、なぜ、人はスタバでそんなに仕事をしたがるのだろうか。筆者の友人の編集者はスターバックスのヘビーユーザーなので、話を聞いてみた。 「スターバックスの椅子は固いですし、コメダ珈琲などと比べてもそんなに居心地が良いわけではありません。ところが、不思議なもので、そのほうがかえって集中できちゃうんですよ。スタバの魔力と言っていいかもしれません。あと、僕は田舎出身なので、スターバックスで仕事をしている自分にちょっと酔っているのかもしれませんね」 確かに、地方出身者にとってスタバは憧れの存在であり、都会的なコーヒーチェーンの象徴と見なされていることもある。地方都市にスタバができると行列ができるし、以前に町おこしの活動をしている高校生グループを取材したとき、一人の生徒が「古民家にスタバを入れて活性化」なるアイデアを発表したことがあった。ドトールやベローチェ、コメダ珈琲にはない、スタバには独特のブランド力が存在するのだ。 話を元に戻す。一種のスタバ中毒になっているビジネスパーソンが多い理由を、先の編集者はこう語る。 「スターバックスはコーヒーを格安でおかわりできるワンモアコーヒーのシステムがあるので、長居がすごくしやすいんですよね。あと家族連れがそんなに多くないので、仕事に集中できるのです。店内の音楽も耳に心地よい。あと、スターバックスのWi-Fiはすごく効きが良い。いろんな面で他のコーヒーチェーンより優れている点が多いので、非常に重宝します」
重要な情報を人目に付く場所に置くな
ところで、これはスタバに限った問題ではまったくなく、完全に客側の問題なのだが、テレワークの普及で非常に気になっていることがある。先ほど例に挙げたリモート会議をする客と同様に、喫茶店で重要な資料を広げ、しかも人目に付くような状態にしている人がとにかく目に付くのである。 筆者がそうした“ヤバい”光景を目にしたのは、一度や二度ではない。例えば、池袋のある喫茶店で、筆者はかなり重要と思われるデビュー前のアイドルの内部資料を広げ、仕事をしている人を見たことがある。明らかに業界関係者であろう。また、ある広告代理店の社員と思われる人が、プレゼンの資料をやはり誰にでも見えるように広げながらパワーポイント作りに励んでいる姿を見たこともある。 他にも、ここに書けないような機密情報を、完全に無防備で人目に付く状態で扱っている人を何度も見た。おそらく、同様の経験をした人は読者にもいると思う。誰かがもしそれを見てXに載せてしまったら、大問題になるだろう。喫茶店で会社と同じように資料を扱っている人があまりに多い。正直言って、テレワークの普及は考えものだと思う。 筆者は「デイリー新潮」で仕事をしているとはいえ、そういった情報を勝手にネットに上げるような浅はかなことはしない。しかし、先に述べたような無防備な状態で晒されている情報が、もし暴露系YouTuberの目に止まってしまったら大変なことになってしまうのではないか。いや、一般人の方がそういった何気なく見た情報をネットに載せてしまう傾向が強いので、余計に恐ろしい。筆者はテレワークの普及による個人情報の漏洩が心配だ。本当にセキュリティは大丈夫なのだろうか。
ライター・山内貴範 デイリー新潮編集部
新潮社