水窪の大規模火災、放火罪の被告死亡で公訴棄却 住民「反省聞きたかった」 地裁浜松支部
浜松市天竜区水窪町地頭方で2023年10月に発生した大規模火災で、自宅に火を付けて周囲に延焼させたとして現住建造物等放火の罪に問われた住所不定、無職の男が、裁判員裁判の公判期間中に死亡し、静岡地裁浜松支部は23日までに、被告の公訴棄却を決定した。 棄却決定は18日付。被告は24年8月の初公判で起訴内容を認めた。89歳だった9月上旬の公判では途中で胸の痛みを訴えたため休廷となり、救急搬送されていた。その後の期日は延期された。 起訴状などによると、被告は近隣家屋などに延焼する可能性があることを認識した上で、自宅に放火して自殺しようと考え、23年10月5日午前10時45~55分ごろ、自宅の障子紙にマッチで点火し、火を燃え広がらせて自宅と周囲の住宅の計6棟を全焼させたとされる。 ■「反省の言葉聞けず残念」住民戸惑い 被告の死亡で公訴棄却が決定し、火災の全容は裁判で明らかにはならなかった。被害を受けた水窪町の向市場地区で暮らす一部住民の補償の手続きは残されたまま。「やりきれない」―。住民から戸惑いの声が上がった。 初公判を傍聴した同地区の60代女性は「非常に残念。裁判で反省の言葉を聞くことができなかった」と話した。初公判では起訴内容を認め、裁判官の質問に淡々と応じる様子を見ていた。「初公判の時は元気だったことを強く覚えている。火災を起こした時の気持ちをもっと知りたかった。補償の問題も残っているし、やりきれない」と落ち込んだ様子で話した。 火災で自宅が全焼し、町内の別の家に生活の場を移した70代男性は「補償の手続きをしている最中だったので本当に驚いている。何も言うことができない」と言葉少なだった。
静岡新聞社