「無書店自治体」解消へ、取次大手が新サービス 独立系書店を支援
出版取次大手のトーハン(東京)は、店主の個性や選書を魅力とする「独立系書店」などの開業を支援するサービス「HONYAL(ホンヤル)」を始めた。各地で増えている「無書店自治体」の解消をめざす。 【写真】都道府県別の「書店ゼロ」の市区町村割合 トーハンの調査では、独立系書店は全国で340店舗ほどある(今年10月時点)。これまでは書店を開こうとすると、取次会社への多額の費用が必要だったが、HONYALでは保証金を原則不要とし、一般的に開業時に一括払いとなる初期在庫費用も分割払いの相談に応じるという。 また、出版社が取次を通して書店に新刊書籍の販売を委託する「委託配本制度」を適用せず、店主の仕入れたい本を全国の3千以上の出版社から調達できるようにした。配送は週1回で、雑誌は対象外とした。 HONYALを始めた背景には、「無書店自治体」の増加がある。出版文化産業振興財団によると、無書店自治体は全国の27.9%に上る(今年8月現在、取次会社に口座を持ち、実店舗がある新刊書店を対象に調査)。 HONYALでは、独立系書店のほか、飲食店や美容室といった他業種の店舗と書店の併設も視野に入れる。 同社によると、10月中旬のサービス開始から約1カ月で全国から200件超の問い合わせがあった。書店単体での経営の希望は少なく、併設の希望が多いという。 すでに最初の成約があり、北海道南幌町にある公共の子ども向け室内遊戯施設の中に、書店がオープンすることが決まった。12月下旬の予定で、絵本や児童書を中心にそろえるという。 HONYALの広報担当者は「本屋をやりたい人がいて、本を買いたい人がいる。我々にできることがあるのではと考え、まず本屋を始めやすい仕組みをつくった。一軒でも本屋をオープンさせ、無書店自治体がなくなる一助になりたい」と話している。(波多野大介)
朝日新聞社