【ユースエール最多】若者定着へ裾野広げて(11月6日)
国の「ユースエール認定制度」で、本県の認定数は67社で全国最多となっている。若者が働きやすい職場づくりを促す制度の意義を周知して裾野を広げ、認定要件を業態に応じて柔軟に変更する改善策も進めてほしい。課題となっている県内からの若い世代の流出防止にもつながる。 制度は常時雇用300人以下の事業所を対象にしている。認定を受けるには、若者の採用や人材育成に積極的であるほか(1)直近3年間の新卒者ら正社員の離職率が20%以下(2)前年度の正社員の月平均の所定外労働時間が20時間以下(3)有休休暇の取得率が平均70%以上または年間取得日数が平均10日以上(4)直近3年間の男性の育休取得者が1人以上または女性の育休取得率が75%以上―などの要件を満たす必要がある。さらに、こうした情報の公表も求められる。準備期間は1年以上を要する例が多く、認定後は、1年ごとに要件を満たしているか国の確認を受ける。 制度は企業側に正社員の雇用を促す狙いで2015(平成27)年度に始まった。福島労働局によると、人手不足が深刻化している中、企業側が求人の際に労務管理能力の高さを示し、「優れた職場」として売り込む根拠になっているという。
ただ、業種間の偏りがみられる。67社の約7割を建設業や製造業が占め、サービス業は全体の2割程度にとどまる。勤務形態が職場内で異なり、労働時間を管理しにくい事情が背景にあるとみられるならば、業種別に認定要件を定めるなど、見直しの検討が必要な時期にきているのではないか。 総務省の2023(令和5)年の人口移動報告によると、本県の若年層(15~24歳)の県外流出は4569人で、47都道府県で6番目に多い。こうした流れを断ち切らなければ、人口減少や少子化が一段と加速し、本県の活力が失われる事態は避けられないだろう。若者が働きやすい職場環境づくりは急務だ。関係機関が一体となって認定取得を県内全域の事業所に呼びかけてもらいたい。 原材料費の高騰が賃上げを目指す中小企業の重荷としてのしかかっている。生産性や作業の効率性を高めて労働時間の短縮を図る努力も一層必要になる。(渡部総一郎)