V16を搭載した「チゼータ」はランボのエンジニアとガンディーニが手掛けた夢のスーパーカーだった! 現在の参考価格は1億円前後…!?
初回生産は9台のみ完成
ところがザンポッリ氏とモロダー氏のパートナーシップは、プロトタイプ第1号が製作された直後に解消。当初は「チゼータ・モロダーV16T」として販売されたこのクルマは、「Claudio Zampolli」のイニシャル「C.Z.」をそのままイタリア語読みした「チゼータ」の名のみを冠して生産に移された。さらに、生産の遅れとモデルの複雑さがもたらすコスト高騰のため、V16Tの初回生産分はわずか9台しか完成しなかったとされる。 しかし、ザンポッリ氏にとってチゼータは成功だったというべきだろう。自らのデザインでエクスクルーシブなスーパーカーを作るという彼の夢は達成されたうえに、生み出されたスーパーカーの仕上がりは、まさに壮麗というほかなかったのだ。 チゼータの生い立ちやコスト、エクスクルーシブ性を考えれば、生産されたV16Tのひとつひとつに興味深い裏エピソードがあっても不思議ではあるまい。今回の「Monterey 2024」オークション出品車であるV16T、シャシーナンバー「101」も例外ではない。 1983年にイギリスからブルネイが独立したのち、ブルネイのスルタンとその一族は莫大な石油資産の一部を投入し、世界最大のカーコレクションを築いた。あらゆるメーカーにおよそ2000台のクルマをオーダーしたといわれる王室は、1990年代の厳しい時代を通して、独力で多くの高級ブランドのビジネスを維持してきた。 そして、お金で買えるもっとも高級でエポックメイキングなスーパーカーを探し求めた結果、彼らはチゼータV16Tにたどり着いたことになるのだ。
ブルネイ王室に入手された3台中の1台は、数奇な運命をたどる
ブルネイのロイヤルファミリーは、イタリアで9台が製作されたチゼータV16Tのうち3台を購入したとされる。ブラックの車両が2台と、このブルーの1台である。 今回「The Turbollection」オークションに出品されたシャシーナンバー101は、ブルネイ王室の代行として、シンガポールの「ホン・セー・モーターズ」社がオーダーしたもの。ホン・セー社はシンガポールにおけるフェラーリ正規ディーラーであり、ブルネイ王室コレクションの多くが、同社を通じてオーダーされていたといわれている。 興味深いことに、ほかのほとんどの生産モデルはサイドエアインテークに垂直の太いスリットを備えていたのに対して、シャシーナンバー101は白いプロトタイプと同じく、水平の細いフィンを備えている。 ダークブルーのボディに、同じくブルーのレザーインテリア、そしてブルネイの交通法規に合わせて右ハンドルで仕上げられたシャシーナンバー101は、イタリア全土でのプレス撮影に使用され、1993年のジュネーヴ・ショーにも展示された。 RMサザビーズの公式ウェブカタログ作成時、オドメーターに刻まれていた走行距離983kmのほぼすべてが、この時期のファクトリーによるテスト走行およびPR活動のために蓄積されたものと考えられている。 このV16Tは、1993年3月にイタリア・モデナからアジアへと出荷される。ところが理由は不明ながら、シンガポールのホン・セー・モーターズ内に25年以上も保管され、ブルネイに引き渡されることはなかった。
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