貿易、軍事支援…中国が中東・アフリカに照準 日米欧の包囲網かいくぐる狙い
【北京・伊藤完司】中国がアフリカや中東諸国との貿易などに活路を見いだそうと懸命になっている。日米欧が対中包囲網で歩調を合わせていることが背景にあり、中国政府はアフリカに対して経済援助や軍事支援などによって関係強化を図りながら、民間企業の市場開拓を後押しする。中東では、パレスチナ自治区ガザ地区を攻撃するイスラエルを支援してきた“米国離れ”が進み、中国が存在感を高めている。 【図表】中国の輸出入額(兆円) 広東省広州で10月中旬から始まった中国最大の貿易商談会「広州交易会」の会場では、アフリカや中東諸国のバイヤーの姿が目立った。地元メディア「広州日報」によると、海外から約13万人のバイヤーが参加し、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の参加国が約7割を占める。中東からは前回比で4割以上増えて約2万人に達し、欧米の約2万4千人(前回比4・8%増)に迫る勢いだという。 電気自動車(EV)のブースはアフリカ系のバイヤーから人気があり、価格や性能を熱心に尋ねていた。欧州では、中国政府の不当な補助金を理由に中国製EVに追加関税を発動する動きがあり、中国の自動車大手の関係者は「欧米はやりにくい。アフリカなどにも富裕層はおり、市場として重要だ」と打ち明けた。 中国税関総署によると、中国の輸出入の総額は2019年の31兆5500億元(約678兆円)から、23年は約41兆7600億元(約897兆円)と32%増えた。国別では日本が3%増、米国が25%増で、38%増のアフリカと55%増の中東が全体をけん引した形だ。 さらに中国は、深刻な不況の中でもアフリカへの巨額支援は継続中。9月、北京であった「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合では、習近平国家主席が3年間で総額3600億元規模の資金拠出を表明。無償軍事援助や合同軍事演習の実施など安全保障面の協力も進め、取り込みを図る。 中東では昨年、対立するイランとサウジアラビアの国交正常化を仲介。今年3月にはイラン、ロシアとの3カ国で海上合同軍事演習も実施した。中国は、原油の購入を通じてイランを支えているとの指摘もある。 アフリカなどへの過大な支援を巡っては、返済できない規模に陥る「債務のわな」との批判もあるが、日中外交筋は「途上国を取り込み、対中包囲網をかいくぐろうとする中国の狙いは一定程度成功している」と警戒している。
西日本新聞