「スノーモンキーだけじゃない」 訪日客で冬にぎわう豪雪地の観光地、外国人の町職員が伝える街の魅力
大雪に見舞われた5日夕、山ノ内町平穏の長野電鉄湯田中駅前の観光インフォメーションセンターで受付を担当する町職員のレーガン・メンキンさん(31)は、かいた雪で大きな山を作り始めた。「外国人が好きなかまくらを作ろうと思って」と無邪気な表情を浮かべた。
昨年11月オープンの同センターは、駅に特急列車が到着するたびに慌ただしくなる。2カ月余で来訪者は計6千人近くになり、多い日は200人ほどが訪れる。「荷物はこちらに」「2階で休憩できます」。この日も台湾人、タイ人、米国人、日本人に日本語と英語で素早く対応した。「やっと楽しくなってきた」。少し落ち着いた時、この仕事への実感を話した。
米国人の父と、マレーシア人の母の間に生まれ、父の勤め先があった秋田県で中学2年まで過ごした。マレーシアの学校に転校後、米国の大学に編入。卒業後は秋田県の英会話学校の講師を経て米国の企業を転々としたが、少年時代に好きだったスキーと相撲を通じ、日本で暮らしたいという気持ちが募った。
コロナ禍で訪日客は激減、パソコンに向き合う日々
2021年6月、国際交流員として町のインバウンド推進の職員になった。しかし、新型コロナ感染拡大の影響で訪日客は町にいなかった。静かな町役場でパソコンに向き合う日々はつらかった。支えになったのは、町の魅力を知ったこと。来日前は大半の訪日客と同じように「スノーモンキー」で有名な地獄谷野猿公苑しか知らなかった。
国内最大級のスキー場、雪質に定評がある志賀高原や湯量豊富な湯田中渋温泉郷…。町内を巡り「スノーモンキーだけじゃない魅力を世界に発信したい」と思いを巡らせるようになった。昨年、新型コロナが落ち着き、インフォメーションセンターの開設に準備から携わった。
センターで受ける質問で最も多いのは「スノーモンキーへのバスはどこ?」。地獄谷野猿公苑を訪れた後、町外に出て行く人が多い。スキー場や温泉、ボリューム満点の食堂、星空のきれいな場所…。自身の目で確かめた町の魅力をできる限り伝えている。