不確定要素の多い2025年は「時間と資産の十分な分散を」、日本株に強気の理由=フィデリティ投信の展望
フィデリティ投信は11月26日、「2025年 市場展望」をテーマにメディア・ブリーフィングを行った。今年10月に社長に就任したコルビー・ペンゾーン氏(写真)が冒頭のあいさつを行い、同社取締役副社長 運用本部長の鹿島美由紀氏が日本株を中心とした展望を語り、フィデリティ・インスティテュート主席研究員 マクロストラテジストの重見吉徳氏が当面の市場トピックスについて解説した。鹿島氏は、国内株式市場について「上昇トレンドが続いている」と強気の見方を堅持。一方で重見氏は、ウクライナとロシアの戦争の行方や米トランプ新政権の政策が見えにくいことなどから、リスク管理の重要性を訴えた。 ペンゾーン氏は、証券業界で30年に及ぶキャリアがあり、米フィデリティ・インベスメンツに20年超在籍。米フィデリティにおいては、法個人向けの商品開発の責任者を務めていた。日本市場については、2024年にスタートした新NISAをきっかけに、長期投資に取り組む新しい投資家が力強く生まれている現状を評価し、「フィデリティでの20年余りのキャリアで培ってきた知見を活かし、日本の皆様のファイナンシャル・ウエルビーイングの達成に貢献できるよう精一杯努力していきたい」と語っていた。 鹿島氏は、国内株式市場の現状について「アベノミクス(2012年末~)で始まった市場の回復が、2023年3月に東証が発した『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応』によってフェーズ2の段階に進み、その流れが依然として継続している」という捉え方としている。特に、東証の呼びかけによる日本企業のガバナンス改革の進展に注目。東証が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業の中で好事例としたプライム市場43社の株価は2023年3月末から2024年9月末までに平均で49.95%上昇し、この間の検討中企業(124社)の平均14.03%上昇や未開示企業(197社)の平均13.99%上昇を大幅に上回った。「東証の要請に対してその対応を『開示済』と『未開示』(検討中、未開示)という分類の間で株価の推移に明らかな違いがあり、今後、未開示企業が開示に向けて本格的に検討することにつながるだろう」(鹿島氏)と期待している。 また、現在のところ国内株式市場の主要な買い手は「事業法人」(自社株買い)の約6兆円であり、海外投資家や個人投資家などに目立った動きはない。鹿島氏は「過去1年間は海外投資家の来日も多く、非常に動きの多い1年間だった」と振り返っており、今後、国内企業のガバナンス改革の進展に伴って、海外からの評価も高まっていくのではないかとした。そして、「米国市場も自社株買いやM&Aなどによって流通株式が減少したことも株価上昇の背景の1つになっている」とし、国内株式市場で進む自社株買いなどの動きが将来的な株高要因の1つになり得るという見方も示した。 重見氏は、当面の市場のポイントについて「わからない」ことを前提にリスク管理をしていくことの重要性を語った。「米国のトランプ新政権に登用される候補者として、イーロン・マスク氏のように既存の秩序を壊してしまうような極端な主張をする人もいれば、金融経済関連のキーマンには秩序を重んじる穏やかな人たちもいる。これらの人たちが実際に登用されたとして政策を決定する段になると対立することになる。その際に、トランプ大統領がどちらの主張を採用するのかということは、その時になってみないとわからない」と指摘。ロシアとウクライナの問題、そして、AIブームがいつまで続くかなど、「わからない不確定要素が多いので、時間と資産を十分に分散しておくことが大事」と語っていた。
ウエルスアドバイザー