ファストパッキングでぐるっとトレラン箱根旅
まずはテントを背負って山に繰り出そう!
2日目の朝は靄がかかって、イマイチな天気。まず目指すのは、金時山。箱根のなかでも一番登山者が多い人気のスポットだ。西側から外輪をたどって金時山に向かうコースは、ブナ林や箱根特有の笹が茂るトレイルで、アップダウンを繰り返しながらじわじわと標高を上げる。 テント泊装備でコースタイムを巻くのは案外大変だ。長尾山以降の最後の登りには、ロープを使うちょっとした岩場もある。靄のおかげで、森のなかが薄暗い。「これはこれで、幻想的でいいよね! 」というのは常套句。途中にある富士山が見えるらしいフォトスポットも真っ白だった。 「あれ? もしかして? 」「きたぁー! 山頂だ! 」。午前11時、金時山に到着した途端にたちまち雲が消え、青空と雲海に浮かぶ富士山がどーんと姿を現した。さっきまでの鬱蒼とした雰囲気からのギャップに私達はいっそう興奮した。 平日だというのに、登山者でにぎわう山頂。この先、小屋も水場もない。お昼にはちょっと早いものの、茶屋でひと休みすることにした。 「あら~よく来たねぇ。今日はどこから登ったの? 」。金太郎茶屋の名物お母さんひさちゃん〞だ。いつも両手を広げてビッグハグで迎えてくれる気さくな人だ。ひさちゃんの優しさに甘えて話し込んだりして、ついつい長居してしまうここはハイカーのオアシス。まったりと休憩しているうちにあれよあれよと時間がすぎ……。 金時山直下の東側は急坂で、木段の整備が進むものの、滑りやすい上に登山者が多く、すれ違いにも時間がかかる。金時山の最短ルートとの分岐となる矢倉沢。ここで下りれば30分で下山。その登山口にはコンビニという最大の誘惑がある。誘惑をなんとかやりすごして、最後に向かうは絶景の明神か岳。 最後? はて? というのも、じつは茶屋で1時間半もすごし、帰りのバスの時間が迫っていた。初めてのファストパッキング。まぁこんなユルい旅もアリとしよう。まずはテントを背負って山に繰り出してみる、そこから始めればいい。 明神か岳が最後の目的地と決まった一行。ゆるやかなアップダウン、木のトンネル。走れる足をここぞとばかりに使って、息ぴったりに走る。芦ノ湖とその先に見える稜線、そして金時山。今回たどった道が一望できるクライマックスに相応しい、明神か岳。再びそっと雲に包まれていく富士山を背に、広い稜線を最高の気分で駆け抜けた。