フロッピーの奥底へと消えた二万八千字 今もワープロ使用、少数民族的な悲哀に直面 気まぐれに訪れる〝オソロシイ現象〟 椎名誠の街談巷語
今回は原稿を記憶させているFD(フロッピー・ディスク)から文字が出せなくなってしまったのだ。
こんなときワープロを使っている人があまりいないと役にたつ周辺情報がまったくと言っていいくらい乏しい。
これまでにもいきなりわが原稿が呑み込まれることはあった。でもそれは一行か二行、文字にして五〇字くらいだ。消えたときはまだ記憶があるうちになんとか復活できる。しかし今回は二万八千字だった。このポンコツ頭ではどうしようもない。
八方手をつくして復活方法をさぐった。その結果、秋葉原に、こういう思いがけない案件の相談に乗り、状況によっては文章を捜索、復活させましょう、というところがあった。そこに駆け込み、わが駄文は生きかえったのだった。
■椎名誠(しいな・まこと) 1944年東京都生まれ。作家。著書多数。最新刊は、『思えばたくさん呑んできた』(草思社)、『続 失踪願望。 さらば友よ編』(集英社)、『サヨナラどーだ!の雑魚釣り隊』(小学館)、『机の上の動物園』(産業編集センター)、『おなかがすいたハラペコだ。④月夜にはねるフライパン』(新日本出版社)。公式インターネットミュージアム「椎名誠 旅する文学館」は https://www.shiina-tabi-bungakukan.com