ハワイ追い抜く「沖縄」観光地モラル低下のヤバさ サンゴの踏みつけなど生態系への影響も問題に
特に、真栄田岬の実証実験でも出てきたように、事業者のモラルの低さは顕著であり、環境を守りながら真っ当なエコツアーをやりたいと考えている事業者が損をする構造になっている点は大きな課題である。 ■レンジャーが少ないといった問題も 筆者の研究プロジェクトでは、エコツーリズムを実施している多くの事業者に聞き取り調査を実施しているが、「法令違反をしている事業者に注意をしたら逆に恫喝された」とか、「お前、裁判したいのか」と怖い顔で言われたという話を頻繁に聞く。
エコツーリズムは国立公園内で実施されていることが多いが、日本では巡視活動を行うレンジャー(自然保護官)が極めて少ないなど、本来自然を守るべき場所の利用の仕方として、多くの問題がある。 また、こうした悪質な事業者は、ガイド技術や安全面の対応が不十分であるにもかかわらず、派手なウェブサイトやフリーペーパーの広告を駆使し、安価な値段で観光客を集めることに長けている。 本来、ガイド技術や安全面の対応をしっかりやるとツアーの金額は上がらざるを得ないが、観光客はそのことがわからないのである。
沖縄県が基地関連産業から脱却して自立したいという思いから、観光産業に前のめりになってしまう状況があることは理解するが、その素晴らしい自然や文化を切り売りしてテーマパーク化してしまっては、元も子もない。 京都や富士山もさることながら、沖縄こそオーバーツーリズムの問題が根深く、深刻であると筆者は考えている。
田中 俊徳 :九州大学アジア・オセアニア研究教育機構 准教授