新紙幣発行まで2週間 岐阜県内、対応に差 大衆食堂、券売機更新できず廃業
7月3日の新紙幣発行まで2週間を切った。岐阜県内では金融機関のATMやスーパーのレジ、バスの運賃箱などで新紙幣への対応が進む一方、小規模事業者には販売機や券売機の更新、買い替えの費用が重くのしかかる。負担を見越して廃業したり、当面は対応を見送るケースも出ている。 十六銀行、大垣共立銀行、岐阜信用金庫は全てのATMで、新紙幣への対応を終えている。ある金融機関の支店職員は「新紙幣か旧紙幣なのか、顧客によって求める紙幣が異なる可能性がある。新紙幣に未対応の券売機を持つ事業者なら旧紙幣を求められるため、窓口で柔軟に対応していきたい」と話す。 スーパーマーケットのバローは導入している約700台のセルフレジを7月3日までに全て新紙幣対応に更新する。新型コロナウイルス禍を経てキャッシュレス決済が浸透したため、現金対応できる既存のセルフレジの一部をキャッシュレスレジに切り替えるほか、セルフレジを新規で導入する場合も現金の使用率が低い店舗ではキャッシュレスを導入する。対象は、全国の約30店舗、県内では各務原市の各務原中央店で、広報担当者は「キャッシュレスレジは都心部で多い」と説明する。 運賃を回収するバスや両替が必要なパチンコ店でも新紙幣への準備が進む。岐阜乗合自動車(岐阜バス・岐阜市)と名阪近鉄バス(名古屋市)は、新紙幣が使える運賃箱への切り替えを完了した。県内のパチンコチェーン店も、パチンコ・パチスロ台の横にある玉貸し機と両替機、精算機のうち、9割を更新予定という。 ただ、すべての事業者が7月3日に間に合うわけではなさそうだ。個人経営の飲食店のように規模が小さかったり、売り上げ増加を見込めなかったりする場合は負担増を理由に対応を見送るケースも出ている。 岐阜市の柳ケ瀬商店街にある大衆食堂「来て屋」は、食券を販売する券売機が新紙幣に対応できないことが一因で、今月末で閉店する。18年前に買った券売機はすでに生産を終了、メーカーには新紙幣を読み取る部品もない。同じタイプの機械の買い替えは100万円程度かかるという。店主の藤本健一郎さん(73)は「7月末の高島屋の閉店で客も減る。券売機のことをきっかけに、店をやめることにした」と打ち明ける。 岐阜駅前のラーメン店は、しばらく券売機を更新せず、新紙幣を利用する客には手作業で旧紙幣と交換するつもりだという。店長の男性(50)は「今の機械は廃番で更新の部品がない。新品は160万円と高い。様子を見てから決める」と客の状況を踏まえて判断する考えだ。 岐阜駅前で金券ショップを運営する東海チケット商(岐阜市)も、チケット自販機3台のうち、更新の部品がない2台を廃棄する予定だ。林洋二社長は「売り上げの柱だった新幹線の回数券の販売が12月に終わる。買い替えには1台400~500万円かかるが、そこまでの利益は見込めない」と話していた。
岐阜新聞社