「ペンギンはクラゲを食べる」従来の見方覆す研究結果 国立極地研など発表
THE PAGE(映像提供:国立極地研究所)
国立極地研究所を含む国際共同研究グループは22日、南極海などのペンギンがクラゲを頻繁に食べている事実が確認されたと発表した。従来、クラゲは栄養価が低いため、ペンギンなど比較的大きな海洋動物のエサではないと見られていた。同研究所は、今回の研究について「クラゲなどのゼラチン質動物プランクトンが、海洋生態系の食物連鎖の中で一定の役割を果たしていることを示唆するもの」としている。
クラゲが食物連鎖の中で一定の役割果たす?
クラゲを捕食したことが確認されたのは、マゼランペンギン、アデリーペンギン、コガタペンギン、キガシラペンギンの4種類。日本やフランスなど5か国の研究者が2012年から2016年にかけて、昭和基地を含む南半球の7か所で上記4種類のペンギン合計106羽に小型ビデオカメラを取り付け、得られた水中映像を解析した。すると、クラゲやクシクラゲといったゼラチン質動物プランクトンを捕食するシーンが198回観察された。同研究所によると、これら4種類のペンギンがクラゲを捕食しているという報告は世界初だという。 これまで、クラゲを食べるのは、マンボウやオサガメなど少ないエネルギーで生活できるごく一部の動物に限られると考えられていた。今回の研究は「クラゲなどのゼラチン質の動物プランクトンを食べる生物はほとんどおらず、生態系の食物連鎖の中での役割はごく小さい」という従来の見方を覆した。 ただ「なぜペンギンがクラゲを食べるのか?」については、はっきり分かっていないと同研究所の生物圏研究グループ准教授、高橋晃周(あきのり)氏はいう。1つの仮説として考えられるのは「クラゲの中でも栄養の多い生殖腺などをよく食べているのではないか」ということ。もっともペンギンは小さなクラゲを丸呑みすることが分かっており、その場合は当てはまらないと語る。もう1つの仮説としては「ペンギンは水中で遭遇したものは何でも食べているのではないかということ」。少し泳げば魚がいそうな海域でも「クラゲがいればちょっとつまんでおく、といった日和見的な行動をするのかもしれない」とも推測する。 今後、同研究グループはクラゲの栄養素や化学組成の研究を進めるという。高橋准教授は「クラゲが増加している海域は世界的にみられる。これまでクラゲが増えると海洋大型動物に悪影響が出るという考えが支配的だったが、今回の研究結果はあながち悪いことばかりではない、という可能性を示している」と語り、今後、クラゲが生態系の中で果たす役割について研究が進むことを期待した。 研究結果は5日にアメリカ生態学学術誌「Frontiers in Ecology and the Environment」に発表した。 (取材・文:具志堅浩二)