「失われた30年」脱却なるか!…世界に訪れた40年ぶりの「インフレ時代」が日本経済にもたらす思わぬ「影響」
インフレは劇薬!?
永濱:植田総裁が言ったこと自体は間違っていませんでした。そもそも日銀の「使命」は物価の安定であって、為替の安定ではありませんから。 エミンさんのお話を聞いて思ったのですが、根本的な問題は、いまが「平時」ではない、ということではないでしょうか。 要するに、「平時」なら、ここまで急激な円安はあり得ないわけです。やはり世界が40年ぶりにインフレの時代に入った影響が大きいと思います。 そもそも円安にはプラスマイナス両面あって、円安でインフレになっても、それが適度なら日本経済にとってはマイナスの側面は限定的になりますが、過度な円安・インフレならマイナスの側面が無視できなくなるということではないでしょうか。 「失われた30年」と言われますが、日本はずっとデフレで、企業はコスト高を価格に転嫁できない状況が続いていました。そのしわ寄せを受けていたのが人件費です。要するに、賃金が上がりにくい構造になっていたわけです。 しかし、ロシアのウクライナ侵攻の開始以降、上昇した原材料の輸入コストを価格転嫁せざるを得なくなりました。こうした企業の価格転嫁メカニズムの復活は人手不足も相まって賃金の上昇を後押しすると思います。この点でインフレは「劇薬」ではあるものの、日本経済の復活に一定の役割を果たすと思います。 ただ、円安インフレがいきすぎると、エミンさんが指摘されるように経済への悪影響が目立ってくると思います。どの頃合いで落ち着くかを注視しています。
永濱 利廣、エミン・ユルマズ