松本穂香『嘘解きレトリック』最終話はミステリーとして “最弱” なのに大正解だったワケ【ネタバレあり】
約100年前の昭和初年を舞台とした、貧乏探偵×能力者によるレトロ・ミステリー『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)が、12月16日(月)に大団円の最終話(第11話)を迎えた。 鈴鹿央士と松本穂香という、旬な若手俳優がダブル主演した月9ドラマ。 “人の嘘が聴こえる能力” により、周囲から忌み嫌われていた鹿乃子(松本)は、生まれ育った村を出て九十九夜町にたどりつく。そこで、やたら鋭い観察眼を持つものの、依頼が少ないため借金まみれの貧乏探偵・左右馬(鈴鹿)と出会う。左右馬が鹿乃子を探偵助手としてスカウトし、2人で事件を解決していく物語である。 ■【ネタバレあり】最終話の最大のミステリー要素は? 主人公2人が、町で起こるさまざまな事件を解決していく物語で、殺人といったシリアスな事件を描くこともあるが、窃盗や誘拐といったライトめな事件を扱うこともあった。 そのため、難解なトリックの謎を暴くような本格ミステリーを期待していると肩透かしを食うだろう。 さて、そんな『嘘解きレトリック』の最終話は、なんだったら全話のなかで一番ミステリーとして “弱い” のではないかと思うようなエピソードだった。 ある日、左右馬と鹿乃子が2人で住む探偵事務所に謎の美女が現れ、しばらくの間、一緒に住むことに。実はその美女にはずっと片想いしている相手がおり、その想い人の結婚が決まってしまったので、一緒にいるのがつらくなって家を出てきたという。 最終話の最大のミステリー要素は、その想い人が誰なのかという部分で、要するに “事件” と呼ぶほどでもないちょっと複雑な恋愛事情を解決しただけ。 誤解を恐れずに言うなら、ミステリーものとしては非常に “弱い”。しかも、これが最終話である。 だがしかし、『嘘解きレトリック』はそれで大正解! なぜなら、ミステリーとしては最弱だが、ラブコメとしては素晴らしく最強だったからだ。鹿乃子が美女の言動に心が揺さぶられ、左右馬への恋愛感情を自覚するという展開だったのである。 その美女は、鹿乃子が左右馬に恋心を抱いていることに気づいており、最後にこっそり「がんばってね、かのこちゃん」と左右馬と恋仲になれるよう、応援する言葉を伝える。それに対して鹿乃子は「私は助手として……」と否定しようとするのだが、その自分の言葉から嘘の音が聴こえ、ハッとする。 それまで、彼女自身、左右馬へは尊敬の気持ちがあるだけで、恋愛感情はないと思っていたのだが、助手として一緒にいたいという言葉が嘘になっていると気づき――というムズキュンなシーンが描かれたのだ。 ■続編が作れそうなエンディング――シーズン2に期待! このドラマはミステリー要素がウケたというよりも、ほっこりする左右馬と鹿乃子の掛け合いでファンを増やしてきたので、そのムズキュンこそクライマックスにふさわしい視聴者たちが求めていたシーンだったのではないか。 フジテレビの看板ドラマ枠である月9は、しばらく封印していた恋愛ドラマを昨年7月期の『真夏のシンデレラ』で復活させ、それ以降、今年1月期の『君が心をくれたから』、今年4月期の『366日』と、3作のラブストーリーを投入していた。 だが、その3作品はどれも評判がいまいちで、ヒットとは言いがたい不発となっていたのだ。 あくまで個人的な感想だが、ミステリーを謳っていた『嘘解きレトリック』のほうが、その3作品よりもよっぽど恋愛ものとしておもしろかったと思えた。 余談だが、前クールの月9はSnow Man・目黒蓮主演の家族ドラマ『海のはじまり』で、大きな話題になってヒットしたが、賛否両論あるストーリーで酷評するドラマファンも少なくなかった。 それに対し、『嘘解きレトリック』は大ヒットとまでは言えないかもしれないが、否定的な声が少なく、この作品を愛するドラマファンが多くいた印象。 いくらでも続編は作れそうなエンディングになっていたし、なによりずっと観ていたくなるようなやさしい作風だったので、シーズン2を期待する視聴者は少なくないだろう。筆者もそのひとり。ぜひまた月9枠で続編を放送してもらいたい。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
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