ゴールドマンサックス元社員が目撃した…職場の「選ばれし人々」との「圧倒的な格差」
世界トップクラスの地位と報酬が約束されたゴールドマン・サックス。だがその実態は、金と女性に対するおそるべき強欲、嫉妬にまみれた職場だった――。 【マンガ】「一緒にお風呂入ろ」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性の罪悪感 同社の元マネージング・ディレクター(上位8%の幹部職)の女性が1998~2016年の在職期間に目撃した、ミソジニー(女性嫌悪)と人種差別にあふれる、堕ちた企業風土を明らかにする衝撃の暴露本『ゴールドマン・サックスに洗脳された私』から、若手時代のトレーダー業務の光景をお届けする。 巨額の退職金を捨てて、秘密保持契約書(NDA)へのサインを拒否。同社の内幕を告発する道を選んだ彼女の回顧録を読み進めるうちに明らかになる、金融資本主義の欺瞞と、その背後にある差別的な思考とは?
よく似た気質の人々が集まる
ゴールドマンの部屋は、高校の教室とさほど変わらない。そこにいる人たちの気質はよく似ている。ただし、彼らがやるのは勉強ではなく仕事だ。リサーチャーやストラテジストは“おたく”気質。スプレッドシートや調査レポートにじっくり目を通し、市場の先行きを予測するのが好きな人たちだ。バンカーはいわゆる“お坊ちゃん・お嬢ちゃん”タイプ。完璧な着こなしで品のいい話し方をし、フォーチュン500の企業のCEOに、いつでも買収のアドバイスができるよう準備を怠らない。 このふたつのタイプの人たちはロッカーの場所にもこだわりがあるし、経営幹部のオフィスのすぐ近くに自分の席を持ちたがる。といっても、経営幹部はいつもそこにいるわけではない。世界じゅうを飛びまわり、顧客にゴールドマンを売りこんでいる。とても忙しい人たちで、彼らのアシスタントには、さらにアシスタントがついている。 セールス&トレーディング部門の人たちは、さしずめスポーツ選手。トレーディング・デスクがロッカールームと呼ばれるのもうなずける。私が所属しているのはそこだ。のちに別のビルに引越しをした際は、“カジノ”という愛称がつけられた。トレーディング・デスクが並んでいるのはフットボール場よりも広いところで、窓はなく、高い天井に明るい蛍光灯がついている。このカジノには時間の感覚というものはない。社員の集中力が続くように、経営幹部が密かにこの部屋の酸素濃度を高めているという噂もあるほどだ。