<春に輝け>’20センバツ 花咲徳栄 チーム紹介/上 攻撃 新体制、チームに勢い 井上主将、打線引っ張る /埼玉
3月19日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する第92回選抜高校野球大会に、4年ぶりに出場する花咲徳栄。2019年秋の関東大会では準々決勝で惜敗したが、高いレベルで投打に好記録を残した。約3カ月間の冬練習を経て攻守ともにパワーアップしたチームの姿を2回にわたり紹介する。【平本絢子】 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 「うまく打っている」「もう少し前だ」。24日午後5時、加須市の花咲徳栄グラウンド。全体練習が終わり、1年の投手とマンツーマンで打撃練習に取り組む井上朋也主将(2年)に、岩井隆監督が声をかけた。 1年間耐えられる体づくりに励む伝統の冬練習が終わったのは今月15日。22~24日は久しぶりに実戦練習を行った。井上主将はバットの芯で球をとらえる感覚を身に付けるため、他の選手が通常の金属バットで練習する中、一人木製のバットで臨んだ。バットの出し方やタイミングを試行錯誤。「練習量は一番」と誰もが認める井上主将のこの日の自主練習は、1時間半以上に及んだ。 花咲徳栄は秋の県大会、関東大会の全9試合で、関東大会出場校の中で最高となるチーム打率3割9分をマークした。井上主将を軸に南大輔選手(同)、田村大哉選手(同)ら昨夏の甲子園メンバーが打線を引っ張ってきた。副主将を務める田村選手は「秋よりも打球が変わってきた。チーム全体でも飛距離が上がって成果が出ている」と現在の成長を実感する。 昨夏の埼玉大会で5連覇を達成し、県の高校野球界をリードする花咲徳栄。だが新チームの歩みは順風満帆ではなかった。夏の甲子園から戻った当初は寮生活など私生活の乱れが目立ち、田村選手は「代替わりして抑える人がいなくなり、チームが緩くなっていた」と振り返る。岩井監督に怒られ、ミーティングに時間を費やし、練習がままならない時期もあった。ぎくしゃくした雰囲気は関東大会の間も続いた。 昨年12月には、それまで主将だった中井大我選手(同)が副主将となり、副主将だった井上選手が主将に。副主将は2人体制から中井選手、田村選手、渡壁幸祐選手(同)の3人体制に切り替わった。中心メンバーの中井選手がプレーに集中できるようになり、個々の役割が明確化。チームに勢いが生まれた。 1年生も冬を越えてたくましくなった。秋の公式戦でチーム最多の18安打を放った浜岡陸選手だけではなく、秋山貫太選手、飛川征陽(せいよう)選手らが中心選手に成長した。 3月上旬には沖縄県でキャンプし、一層のレベルアップを図る。「センバツは良い投手が多い。そう簡単には点は取れない」と井上主将。岩井監督は「序盤の三回までが勝負」と見る。得意の猛攻を春の甲子園でも見せられるか。冬の成長の真価が問われる。