【ラグビー】フランスのMVPは今年もデュポン! 代表チームとトップ14の最優秀選手賞をダブル受賞。
9月23日、フランスのプロリーグ運営団体であるLNR主催で、『ラ・ニュイ・デュ・リュグビー(La Nuit du Rugby)』が開かれた。直訳すれば『ラグビー・ナイト』。昨季のトップ14とプロD2(2部リーグ)の選手、スタッフ、レフリーの活躍を表彰する式典だ。 131年の歴史を持つパリ最古のミュージックホール「オランピア劇場」に、今年も各賞にノミネートされた選手、スタッフ、レフリー、そしてフランスラグビー界のレジェンドが集った。アントワンヌ・デュポンはタキシードに蝶ネクタイ姿で現れた。最優秀選手賞にノミネートされていたボルドーのテビタ・タタフもスーツにネクタイで出席した。 LNRの初代会長で、元フランス代表FBセルジュ・ブランコが開会を宣言した。 新人賞には、ポーのWTB/FBとして昨季トップ14で24試合出場、6トライを挙げ、7月にはアルゼンチン遠征でフランス代表にも選ばれたテオ・アティソグベ(19歳)が選ばれた。 最優秀レフリー賞は、昨季で引退した元国際レフリーのマチュー・レイナル(43歳)に授与された。レイナルの受賞は3年連続で、4度目になる。 レイナルは「私が心の底から愛した職業の素晴らしい終着点になりました。とてもエキサイティングで濃厚で、時には困難なこともありました。なぜなら、議論を呼ぶ判断のないレフリーのキャリアなんてないからです。そんな試合もありません。皆さんがそのことを理解してくれていること、今後も理解してくれる聡明さを持ってくれ続けることを信じています」と受賞のスピーチをした。 レイナルは、今季からフランス協会内に創設された「プロ部門レフリングテクニカル対策室」で、同じく元国際レフリーのロマン・ポワットと現役レフリーのサポートやワールドラグビーとの連携に取り組んでいる。 式典20年目に当たる今年は、特別に「20周年賞」が設けられた。トップ14とプロD2の全ての選手、コーチ、レフリー、そしてクラブの経営陣に声をかけ、フランスラグビーのこの20年間を代表する人物を一人選んでもらった。その結果、2011年ワールドカップ(W杯)でキャプテンとしてフランス代表を決勝に導き、またワールドラグビーの最優秀選手にも選ばれたティエリー・デュソトワールにこの特別賞が贈られた。 トップ14の最優秀スタッフには、トップ14とチャンピオンズカップの2冠を達成したトゥールーズが選ばれた。トゥールーズのスタッフは、2年連続、2019年から4度目の受賞だ。 昨季のボルドーとの決勝戦の会場に出発する前に、ユーゴ・モラ ヘッドコーチが選手たちにスピーチしている動画が映された。映像はスタジアムに向かうバスの中の選手の表情に変わり、モラHCの声に重ねられる。 「優勝候補のプレッシャー、NO.1のプレッシャー、2冠のプレッシャー。この1週間ずっと言われてきた。しかし君たちがプレッシャーを感じるなんてありえない。なぜなら、このグループにプレッシャーは常についているものだから。君たちは日々プレッシャーと付き合っている。プレッシャーを支配し、手なずけ、共に生きている。自分よりも大きな何かを考えてほしい。この決勝に勝てば、君たちのスポーツの歴史に、我々のクラブの歴史に、君たちという素晴らしい世代の足跡を残すことになる。そして今夜、私たちはチャンピオンになる」 トップ14最優秀選手賞と最優秀代表選手賞は、今年もデュポンが獲得した。2017年に新人賞を受賞し、代表選手賞だけだった2022年を除き、2021年からデュポンが独り占めしている。補足だが、それぞれの賞は選手とコーチの投票によって選ばれる。 受賞者の名前が呼ばれる前から、招待されていたパリ地方のラグビースクールの500人の子供たちからデュポンコールが沸き起こり、「アントワンヌ・デュポン」と発表されると拍手と大歓声に変わった。 司会者から「今年のオリンピックで世界的スターになり、あなたのオーラはフランスだけではなく、もはやラグビー界をも超えています。あなたのおかげで、ラグビーが従来の枠から出ることができたことに気づいていますか?素晴らしいアンバサダーです」と言われ、 「『オリンピックの決勝を見て泣いた』とか、『トゥールーズの試合を見て子供がラグビーを始めた』と多くの人から言ってもらい、僕たちが日々していることの意義を感じている。微力でも、このスポーツをさらに多くの人に知ってもらい、お役に立てれば幸いです。でも、最も大切なのはグラウンドでのパフォーマンス。それがあってこそのこの2つのトロフィーです。このクラブで、特別な仲間、特別なスタッフと一緒にプレーできて、どれだけ自分が恵まれているかを強く感じます。このクラブには強いアイデンティティーがあり、そのおかげで今回もトロフィーが得られたのです。あらためてチームメイトに感謝し、このクラブでプレーすることをどれだけ楽しんでいるかを伝えたい」と、デュポンらしい、爽やかで非の打ち所がない答えを返した。 この賞のプレゼンターであるブランコとデュソトワールの2人のレジェンドに挟まれてデュポンが立つ。「3つの世代が並びました。素晴らしい光景です」と司会者。世界から称賛を集め、それぞれの時代を代表する3人だが、デュポンがそこにいるのは、なぜか違和感がある。 そして舞台のスクリーンに、トゥールーズでプレーしているデュポンの映像が映し出された。そろそろ、このジャージーを着てプレーするデュポンが見たくなった。 しかし、デュポンはアメリカに旅立った。NFLのロサンゼルス・チャージャーズからの招待を受けて、9月30日まで合宿に参加するそうだ。また活動範囲が広がった。