世界の災害死者6割「猛暑」で 発生数に比べて高い割合
2020年から今年半ばまでの4年半の間、世界の自然災害による死者のトップが「猛暑」だったことが世界気象機関(WMO)の集計で分かった。全体の57%と最多で、「洪水」22%、「暴風雨」16%などと続いた。一方、災害発生数は「洪水」が最も多い50%で、「猛暑」は3%に過ぎなかった。直接的な経済損失も最大は「暴風雨」の59%。WMOは各国に対し、災害ごとのリスク評価と、気候・気象情報や早期警報の充実を急ぐよう求める。 【グラフ】自然災害の発生数割合 死因とは比率が大きく異なる 日本など世界約190カ国の自然災害や人道危機を記録しているデータベース「EM―DAT」をWMOが集計し、7日公表した。 自然災害は七つに分類され、発生数は半数を占める「洪水」の他、「暴風雨」33%、「土砂崩れ」5%、「山火事」「干ばつ」各4%、「猛暑」3%、「寒波」1%だった。 ところが犠牲者の死因は、トップが「猛暑」で、「洪水」「暴風雨」と続き、「土砂崩れ」「干ばつ」各2%、「山火事」1%で、発生数の少ない「猛暑」が死因の6割を占めることが分かった。 一方、直接的な経済損失は「暴風雨」が最大の59%で、「洪水」27%、「干ばつ」9%、「山火事」4%と続き、「猛暑」は1%未満。猛暑に伴う農作物の不作などの二次的な被害は反映されていないとみられる。 WMOによると、気候変動に適応するための費用はこの間、世界で計630億ドル(9兆6300億円)に上った。しかし、気候・気象情報を提供するサービスや早期警報のシステム構築には40億~50億ドルにとどまり、全体の3分の1を占めた観測体制強化などへの投資額と比べると「低い」としている。WMOは「双方が結び付いていない」と指摘し、人命を守るための取り組みの充実を求めている。 (栗田慎一)
日本農業新聞