【大学野球】早大学院出身で森徹以来のプロ入り狙う 「リアル・殿馬一人」早大・山縣秀
好きな言葉は「置かれた場所で咲く」
山縣は2年春前の練習で、鉄壁の守備力が小宮山監督の目に留まり、同秋から遊撃のレギュラー。3年時はチーム事情で二塁に回り、最終学年に定位置に戻り、先述の活躍だ。 器用な守備は、独特のテンポからくる。リズム感は音楽で養われた。小学2年からピアノ教室に通った。国内最大規模のコンクールに出場したキャリアもある。レギュラークラスのみが入寮を許される安部寮に入る、大学2年秋まで続けてきた。寮にはキーボードを持ち込み、時間を見つけては鍵盤を弾くのが気分転換。得意曲はショパンの『幻想即興曲』。尊敬する3歳上の姉から教わったという。 「両手、両足を動かし、一度にすべてのことを消化しないといけません。考えていては、間に合わないですから。体が覚えるまで練習した。脳の刺激、リズムは野球に通ずる」 野球漫画の「『リアル・殿馬一人』とよく言われます」と、山縣は屈託のない笑顔を見せる。二塁と遊撃でポジションこそ異なるが、同じ右投げ右打ちの職人肌である。 東京六大学秋季リーグ戦は9月14日に開幕する(対東大)。この春から早大応援席からは、昨秋までの「ヤマガタ」ではなく「ガタシュウ」のコールが鳴り響く。応援部によれば、ファンにより親近感を持たせるため、選手の要望を取り入れるようにしたという。ちなみに三塁手・小澤周平(おざわ・しゅうへい、3年・健大高崎高)は「オザシュウ」だ。 「ガタシュウ? 2学年上の蛭間さん(蛭間拓哉、西武)に、2年春にベンチ入りしたときに名づけてもらいました。気に入っています」 山縣の好きな言葉は「置かれた場所で咲く」。その理由を「花は咲く場所を選ばず、与えられた場所で咲きますので」と明かす。身の丈に合ったプレーを貫く。山縣のリズミカルな守備が早大にペースを呼び込み、攻撃へとつなげる。今年6月の全日本大学選手権では青学大に惜敗して準優勝と、神宮で悔しい思いをした。リーグ戦春秋連覇と、明治神宮大会制覇を目指す戦いが始まる。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール