思春期男子の悩みに共感 男性養護教諭・山口さん(宇城市)「性別関係なく信頼関係を築きたい」
宇城市の山口起輝[かずき]さん(25)は、全国でも数少ない男性の養護教諭だ。「いろいろな立場の子どもの支えになりたい」と、中学から目指した夢を実現し、昨年4月に同市の松橋西支援学校に赴任した。小中学生約140人の健康に気を配りながら、思春期の男子ならではの悩みにも耳を傾けている。 「先生、虫に刺されたぁ」。4月下旬、保健室に男子児童2人が次々に駆け込んだ。「どれ、見せて。校外活動だったの?」。山口さんは、もう1人の養護教諭、後藤純子さん(48)と手分けして患部を確かめ、塗り薬を用意した。 処置を終えた後も、腹痛の訴えや医療的ケアが必要な子どもらが、ひっきりなしに保健室を訪れる。単に雑談を楽しむ子も。山口さんは「気の良いお兄ちゃんとして、関わることができているかな」と笑う。 文部科学省の昨年度の学校基本調査によると、全国の養護教諭、助教諭計約4万人のうち男性は100人ほど。熊本県教育委員会などの調べでは昨年度時点、男性は山口さん1人。本年度、新たに八代工高に1人配置された。
山口さんが養護教諭を目指したのは、中学の時に仲の良い友人が不登校になったのがきっかけ。当時の養護教諭が、担任と協力して友人の健康状態や家族の状況を気にかけていた様子を目の当たりにした。山口さんもよく「友人と関わり続けてくれて助かっている」と声をかけられた。親身な姿勢に胸を打たれ、「さまざまな家庭環境に置かれた子どもの力になりたい」という思いが湧いた。一つのクラスに限らず、学校全ての子どもと関われるのも、大きな魅力だと感じた。 赴任した当初は、保護者から「男性なの?」と驚かれたが、多くの子どもたちはすんなり受け入れた。けがや発熱の救急処置をし、男子生徒にひげの処理方法を教えたり、悩み相談に応じたりする。 ある男子生徒は急激に背が伸び、体つきががっしりしたことに戸惑いを覚えていた。山口さんは「ぼくは身長が伸びずに悩んだこともあった。今は不安でも、いずれ受け入れられる日がくるよ」とアドバイス。「担任と別の視点で関わる同性の存在は大切だ」と手応えを感じた。後藤教諭も「自身の体として共感できるのは、子どもの安心につながるのではないか」と期待する。