なぜ消えた? ネットで波紋「うなぎパイ」JR名古屋駅売店の販売取りやめ
パイ生地にウナギのエキスを混ぜた焼き菓子で、静岡県浜松市の銘菓・うなぎパイが、JR名古屋駅(愛知県名古屋市)のキヨスク売店などで販売取りやめになっていたことがこのほど分かり、インターネット上で波紋が広がっている。8月下旬頃からSNSで情報が拡散。9月2日には製造元の春華堂(静岡県浜松市)が、公式コメントを発表するまでの事態になった。年間8000万本が製造され、全国にファンが多い菓子に何が起きたのか、経緯をまとめる。
売店運営側「定期的な商品見直しの一環」 4カ月遅れのネット反応に「困惑」
同駅でキヨスクなど28店舗を運営する東海キヨスク(愛知県名古屋市)によると、うなぎパイはこれまで24店舗で販売していたが、「定期的な取扱商品の見直しと、他の土産物などの兼ね合いを考慮」という理由で、2月から販売店数を徐々に減らし、4月には同駅西側のエスカ地下街にあるギフトキヨスク1店舗だけでの販売となった。扱いをやめた店舗では、うなぎパイの有無について聞く来店客が日に数人おり、その都度ギフトキヨスクでの販売を案内しているという。駅直結の百貨店など周辺では従来通り販売されている。 東海キヨスクの広報担当者は、日頃行っている取扱商品見直しの一環だったことと、販売縮小から4カ月後のタイミングで大きな話題になったことについて「困惑している」のが本音。販売の要望が多い場合は再検討することになるが、「現状はその予定はない」と話した。うなぎパイ以外の春華堂製品の取り扱いは従来通り続けているとして、一部で臆測を呼んだ両社間のトラブルについては否定した。
製造元「販売再開」交渉へ 新幹線『のぞみ』乗車で「買えない」
春華堂の広報担当者によると、4月ごろから同駅での販売縮小について残念がる声が日に数件寄せられているという。ネット上で話題になった8月以降、公式コメントを掲載したこともあり、同社ホームページのアクセス数は従来の3倍にまで急増した。「多くのうなぎパイファンがいるということを再認識した」ということで、今後は販売再開について、東海キヨスク側と話し合いを進める方針だ。 寄せられる声で多いのは「新幹線の『のぞみ』に乗ったら、買えなくなった」。 同社によると、これまで東海道新幹線の駅のホーム売店でうなぎパイが買えたのは、東は熱海駅(静岡県熱海市)、西は名古屋駅までだったが、今回の販売縮小により、西は三河安城駅(愛知県安城市)までになった。これにより、のぞみ停車駅のホーム売店には、うなぎパイがなくなった。 同社広報担当者は「名古屋駅での取り扱いは30年以上の実績があり、浜松は静岡県でありながらも、隣接する愛知県名古屋市とも長い歴史の中で培われた文化的・経済的に近い関係もある。販売再開を働きかけていく」と話した。
「夜のお菓子」として全国区に
うなぎパイは、春華堂が1961年に発売。高度経済成長期の当時、夜の夕食だけは家族の集まる団らんのひとときとして、うなぎパイを囲んで楽しんでほしいという意味を込めて「夜のお菓子」と命名・称するようになり、浜松土産として定着した。「うなぎ」と「夜」というキーワードから様々な意味に解釈されやすく、メディアにたびたび取り上げられ、全国にファンができるようになった。発売当時から職人による手作りを続けており、ピーク時には1日30万本が製造される。 (斉藤理/MOTIVA)