<センバツ21世紀枠>候補校紹介/1 知内(北海道) 「聖地」再訪へ、打撃強化
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が、1月29日の選考委員会で決まる。困難な環境の克服や、他校や地域に良い影響を与えた活動などの要素を選考条件に加えた「21世紀枠」は、昨秋の明治神宮大会中止に伴い「神宮大会枠」1校が移され、第85回記念大会(2013年)に並ぶ史上最多の4校が選出される。全国9地区の候補校の取り組みを紹介する。 ◇知内(しりうち) 北海道南部の津軽海峡に面した知内町。校舎からは青森県の山並みも一望できる。基幹産業は稲作と漁業。海と山に囲まれた自然豊かな町だ。冬はグラウンドに雪が積もり、選手は屋内練習場で体力作りに励んでいる。 チームは昨秋の函館地区大会で3試合中2試合をコールド勝ち。続く北海道大会は初戦を12安打でコールド勝ちすると、準々決勝は夏の甲子園で優勝経験のある駒大苫小牧に逆転勝ち。秋の大会では16年ぶりの4強入りを果たした。一方で準決勝は優勝した北海の前に3安打無得点。チームは今冬、打撃強化を課題に掲げた。 選手自らが吉川英昭監督(44)に申し出、実際の打席をイメージしながら1日1200スイング。吉川監督は「苦しいことを乗り越え、どこに向かうべきか考えることが選手の成長につながっている」と目を細める。 チームは1993年、町立高校では史上初のセンバツ出場を果たした。町はセンバツ出場を受け、冬空に花火を打ち上げ、約6700人の町民がナインを後押しした。あれから28年。人口は当時の3分の2の約4200人に減り、過疎化の流れは続く。それでも野球部は「地域の宝」として町民に愛され、「あの盛り上がりを再び」と願う町民は多い。 練習を再開した1月6日。町内をランニングする選手に町民から「頑張れ」のエールが送られた。新年恒例の「目標、目的書き」の行事では、それぞれの選手が目標とする数字や理念などを画用紙に記し、決意を固めた。 「チームに貢献してみんなを助けたい」「勝利に貢献したい」。その言葉には「全員が脇役、全員が主役」を掲げる野球部の思いが込められている。 川村亮太主将(2年)は「多くの先輩、地域の人々に支えられてきた。甲子園は憧れの場所。町の希望になりたい」。再び聖地へ。選手たちは真っ白な息を吐き、懸命にバットを振り続ける。【真貝恒平、三沢邦彦】=つづく