美容師が今押さえておくべきファッションの流れ・傾向は? 【第7回 WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト】
WWD:ほかには?
村上:23-24年秋冬シーズンの、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の黒いネクタイ。シャツがオーバーサイズで今っぽいシルエットだったり、合わせるパンツがミニ丈だったり、ローファーにスタッズが打ち込んであったり……。ちょっとパンクやストリートのムードを取り入れる、つまり定番を一ひねりするだけで今っぽくなる、というヒントになるのでは。
WWD:その“自由奔放なスタイリング”はマスでも見られる?
村上:街中で起こり始めているのが、カーディガンをパンツイン、スカートインするなどのスタイリング。これからはジャケットの上にブルゾンをはおったり、白シャツとネクタイの上にGジャンを重ねたり、それくらい自由なスタイリングで自分らしさを表現する流れが広がってくるかも。
WWD:ヘアは?
村上:ヘアカラーでいうと、ファッション業界で“クワイエット・ラグジュアリー”が浮上したのと同じタイミングで、ハイブリーチ一辺倒だったトレンドカラーに、自然できれいなブラウンやベージュが戻ってきた。色だけでインパクトを与えるのではなく、本質で人を魅了しようという流れは、ファッションとビューティで通じるものがある。そう考えると、質感がきれいな髪や、一見普通だけどよく見るとテクニックが施されているようなヘアスタイルが時流とシンクロするのでは、と思う。一方、服は“クワイエット・ラグジュアリー”だから、髪型はせめて派手に、という方向性もアリだ。
WWD:編み込みなどで遊んだ、構築的なヘアもあり?
村上:先述したサバト・デ・サルノは、後ろからでも横からでも、360°どこから見ても美しいシルエットの服を作ろうとしている。どこから見ても美しいフォルムの構築的なヘアは、その考え方とシンクロしているように思う。
WWD:ファッションにおける“色”のトレンドは?
村上:一般的には“素材の良さを引き立たせる色”が強くなってきている。例えば素材に柔らかいカシミアを使っているのなら、真っ黒に染めてその良さが分からなくなるよりは、優しいグレーや淡いパステルなど、柔らかい素材の良さがより引き立つ色選びが増えた。逆にレザーのような強い素材を使うなら、黒や赤を用いて、ハードエッジなムードを強調していくような方向性だ。コンテストの作品作りにおいても、トレンドカラーを考えるのではなく、「素材(ヘアやモデルのパーソナリティを含めた“素材”)を引き立たせるにはどの色がいいか」という思考はあってもいいかも。