美容師が今押さえておくべきファッションの流れ・傾向は? 【第7回 WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト】
WWD:まさに“クワイエット・ラグジュアリー”。
村上:強く主張しないけれど、丹精込めて作っていることを表現した“クワイエット・ラグジュアリー”は大きな流れ。定番のアイテムが主役で、いつでも、どこでも、誰でも着ることができる。デザイナーたちはダイバーシティやサステナビリティの価値観も意識している。長く使える物を求め、新しい物を買い過ぎないことを良しとする考え方も追い風になっている。
WWD:定番が主役となる中で、どこで個性や今っぽさを出す?
村上:定番を自分らしくスタイリングするのが今の流れ。特に“若々しさ”が1つのテーマになっており、例えば白シャツにミニスカート、ジャケットに膝上丈のショートパンツといった合わせが、自由奔放なスタイリングをシンボリックに表現している。
WWD:実例を挙げると?
村上:2024年春夏コレクションの「ミュウミュウ(MIU MIU)」は、ブルマーや水着、ホットパンツといったアイテムに注目しがちだが、むしろ見るべきはトップス。シンプルなパーカや、ニットとカーディガンのアンサンブルなど、定番を組み合わせるスタイリングを提案している。23-24年秋冬コレクションもカラータイツなどで意表をついているが、スタイリングを紐解いてみると、トップスはプルオーバーニットやカーディガンなど言わば“普通”のアイテムだ。24年春夏の「プラダ(PRADA)」も肌見せのミニ丈を提案しているけれど、トップスは至ってシンプル。そういった発想が、1つのお手本になりそうだ。
WWD:確かに分かりやすい。
村上:変化がもっと分かりやすいのが「グッチ(GUCCI)」。以前はど派手な原色のカラーブロッキング、大胆なロゴ使い、ギラギラのジャケットといったアイテムが象徴的だった。しかしクリエイティブ・ディレクターがサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)に変わると、例えば24年春夏はミニ丈ではあるけれど、上半身はシンプルなコートやスエット風のジャカードニットをコーディネートするなど、その変わり様が今っぽい。「ミュウミュウ」や「プラダ」は分かりやすいコーディネートが参考になり、「グッチ」はビフォー&アフターを比較すると、「今ってこういう時代なんだな」と感じ取れる。