セキュリティ人材の「男女比」裏に根強い刷り込み
■多様性の1つとしての「女性」に目を向ける ――男性が多いセキュリティ業界において、女性であることのメリットやデメリット、また女性ならではの強みはありますか。 女性であることでメリット・デメリット両方があると思います。女性は珍しいので、顔や名前を覚えてもらいやすく、また「女性を応援したい」という方からチャンスをもらえることもあります。 一方でそれは、望まないのに目立ってしまうとか、それゆえに「自分の実力ではなく“女性だから”チャンスがもらえただけなのでは」と疑心暗鬼に陥ってしまうこともあります。正当に評価されているのかがわかりにくくなってしまうというか……。
私が常々感じているのは「技術の習得に男女差はない」ということです。女性ならではの強みは? と尋ねられることも多いですが、そこに男女の違いはありません。CTF for GIRLSが目指しているのはまさに「女性がセキュリティをやるのが当たり前の社会」。女性だから、男性だから、と区別しなくてもよい世界にしたいなと思っています。 ただ、女性を登用することで広がる多様性はメリットとして大きいと思います。社会の半分を占める女性の参入を阻んでいる形になってしまっている現在のセキュリティ業界は、単純に考えると人材としても半分を失っている状態です。
そこに多様性の1つとして「女性」が加わることでイノベーションが起きたり、新たに目を向けるべき課題が見つかったりするかもしれません。 ■女性セキュリティ人材のキャリア事例も増やしたい ――女性のセキュリティ人材を増やすために、どのような課題がありますか。 まずは入り口を広げるために、「学んでみたい」と興味を持った段階の女性を尻込みさせない仕組みが必要で、「女性は向いていない」とか「女の子がやることじゃない」といった刷り込みを大人がしないように心がけることだと思います。
人生は一度きりですから、やってみたいと思ったことにはどんどんトライしてほしいし、それを「向いていないかも」とあきらめるのはもったいないですよね。採用の場でも「セキュリティ人材は理系の男性」というイメージをなくし、個人のスキルを評価してほしいと思っています。 それから、CTF for GIRLSのような団体としてやっていきたいのは、セキュリティエンジニアとしてのキャリアモデルを増やすことです。女性が少ないので、例えば出産などでキャリアがストップしたら、ブランクができたら……といった想像がしにくい面があるし、メディアに出ているのはカンファレンスに登壇したり書籍を出したりといった人ばかりで、「私には無理だ」と感じてしまう人が多いのも事実です。
でも、CTF for GIRLSには15年ほど専業主婦をしたのちに50代でエンジニアとして再就職された方もいますし、そんなケースももっと知られてほしい。メンバーにもどんどんチャンスを回していきたいですし、セキュリティ人材として活躍を目指す人のサポートはこれからも続けていきたいです。
藤堂真衣 :フリーライター