どうして隣の車にビタ付きで走るの…? 謎の「トナラー運転」の行動心理を交通心理士がズバリ解説
様々な要因が絡み合い、偶然起きてしまう「トナラー運転」
2車線以上の道路では、同じ進行方向のクルマどうしでたまたま速度がカブって、隣どうしのまま走り続けることはよくあるもの。しかし、2台以上のクルマが数100m以上もずっと隣どうしとなると、双方のクルマにとってよくありません。まず死角が出やすいこと、それ以外のクルマに対して道を塞ぐ格好になること、そして「並走し続ける、なんとも言えない気持ち悪さ」も生み出すものです。 【あーこれイヤだ!】高速「地獄のトナラー」状況とは?(写真) 言わば「トナラー運転」ともいうべき場面。こんなとき筆者は車線を変え、トナラー車に道を譲るようにしていますが、不思議なことに譲ったはずのトナラー車が、またしばらくすると再びビタ付きになったりして、またモヤつくこともあります。 こんなトナラー運転をするドライバーにはどんな心理状況が隠されているのでしょうか。ここでは交通心理士で近畿大学物理工学部准教授の島崎 敢先生に、運転者の心理について聞いてみました。 このトナラー運転、島崎先生によれば、様々な要因が絡み合って起きているのではないかはと言います。 「あくまでも1つの解釈ではありますが、こういった運転は、高速道路の物理的特性と運転者の認知、さらには職業的な制約など、様々な要因が絡み合って生じている可能性があります」(島崎先生) 島崎先生はまず、高速道路の勾配変化は非常に緩やかであるため、「運転者が意識しにくい」という特徴があるといいます。その結果、走行車線を走る車両が上り坂で自然に減速したり、下り坂で加速したりすることで、「意図せずに『並走状態』が生まれてしまう」ことがあるとのこと。 また、追越車線側の車両が勾配の変化に気づかないまま速度が変化し、結果的に「並走状態」が続くというケースも考えられるといいます。
大型トラックどうしのトナラー運転には意外な事情が隠されている?
言い換えれば、トナラー運転に至る要因は様々なものが絡み合いながらも、偶然によって起きているケースが多いようにも思いました。 一方、特に高速道路などでよく目にするのが「大型トラックどうしのトナラー運転」です。まさか「俺たち同僚。一緒に仲良く並走しような!」なんて申し合わせをしているとは思わないものの、大型トラックのトナラー状態が数百m続くことで、周囲のクルマが追い越すことができず、結果的に軽い渋滞を起こしていることもあります。 「トラックなどの職業ドライバーの場合は、タコグラフによる速度管理が厳密に行われており、会社によっては制限速度超過に対してペナルティが課せられることがあります。このような状況下では、仮にドライバーが『追い越しを完了したい』『車線を変更したい』という意図を持っていながらも『規定速度を超えることができない』というジレンマに陥り、結果として『並走状態が継続してしまう』ことがあります」(島崎先生) そうした職務的な理由もありつつ、「もっとも、より単純な解釈としては『運転者が周りを見ていない』あるいは『追越車線などの本来の機能の意味を理解しておらず並走状態になっている』という可能性も考えられます」とのこと。このような認知や理解の不足も、不必要な並走状態を引き起こす一因となっているかもしれないと島崎先生は話します。 いずれにしても死角が生まれやすく、結果的に道を塞ぐ格好になることもあるトナラー運転。偶然にも隣り合わせになってしまった場合は安全に車線を変更するなり、道を譲るなりし、周囲のクルマの運行の妨げにならぬよう、臨機応変な配慮をすべきだと思いました。
松田義人(ライター・編集者)