1150万円が3カ月で消えた…SNS詐欺広告で仕掛ける「儲かる話」の落とし穴 長崎県警「トクリュウ」対策チーム結成
SNSで知り合った人物から「儲かる」と投資を勧められ、わずか3カ月で1150万円をだまし取られた――。長崎県内で急増するSNS型投資詐欺の被害。その実態と対策とは。 【画像】長崎県の被害額は8億5000万円に ニセ電話詐欺被害の6倍
「少しでもお金儲けに」72歳男性が1150万円の被害
「私が直接出した金額は計算したら1150万円」。松浦市に住むオガワさん(仮名・72歳)は、うつむき加減でそう語った。2024年1月、メッセージアプリLINEで投資話を持ちかけられたことがきっかけだった。 「女の人が『投資をやりませんか』という形で皆さんに勝たせてあげるという格好で連絡があった」とオガワさん。その後、投資用の口座開設が必要だと言われ、免許証の写真を送信。1回あたり100万円から200万円を指定された口座に8回も振り込んでしまったという。「少しでもお金儲けになるかなと単純な気持ちだった」と被害男性は語る。
「日向裕子」と名乗る人物から…巧妙な手口で信頼獲得
SNS型投資詐欺の特徴は、犯行グループが時間をかけて被害者の信頼を得ること。投資の勉強を呼びかけるインターネット広告をクリックしたオガワさん。その後、「日向裕子」と名乗る人物からLINEが届いた。(以下LINEでのやりとり) 「はじめまして日向裕子と申します。優良銘柄の情報の受け取りまたは投資知識を学ぶために来られたのでしょうか?(中略)2週間で操作に従って100万程度の利益が出きます」 投資の儲けを示す偽の画像とメッセージがほぼ毎日送られてきたという。 「実際に(儲けの)数字が上がってる。その時は必死だった。まさかうまく作られているのが分からなかった」とオガワさんは振り返る。また「自分がやるときはだまされたという気持ちはなかった。」と話し、だまされていると気付いたのは、現金を口座から引き出すために450万円の税金の支払いが必要と言われたからだという。そこでようやく、オガワさんは警察に相談。総額1150万円をわずか3カ月でだまし取られたことが明らかになった。
長崎での被害額は8億5000万円に 県警「トクリュウ」を設立
長崎県内では2024年1月から10月までの間に、SNS型投資詐欺の被害が138件発生。 被害総額は約8億5000万円にのぼる。これは、知人に成り済ましてだまし取るニセ電話詐欺と比べ、発生件数は同程度だが被害額は約6倍という深刻な状況だ。 長崎県警組織犯罪対策課の人見治弘次席は「自分が興味のある投資や出会いに自分からアクセスをしている。まさかだまされるとは思っていない」と分析する。 この事態を重く見た長崎県警は、2024年11月5日にSNS型投資詐欺を含む「トクリュウ」と呼ばれる匿名・流動型犯罪グループの捜査特別チームを立ち上げた。捜査二課に加え、少年課や交通課など部門を超えた情報共有により、犯人グループの早期逮捕を目指す。 しかし、たとえ犯人が逮捕されても、だまし取られた金が被害者に戻ることは難しい。人見次席は「被害者が振り込んだお金は、振込先の口座からいくつかの口座に分けられたり、暗号資産に変えられて追跡が困難になる」と説明する。
「儲かる」話には最大の警戒心を
県警は、SNSで儲け話を持ちかけられたら、まず詐欺の可能性を疑うことが重要だと強調。最寄りの警察署や交番、警察安全相談の窓口への相談を呼びかけている。 オガワさんは「投資をやるために周りから少し借金もあった。自分自身の負担にもなった」と後悔の念を語った。そして、「他の人も十分に気をつけてやってもらいたい」と、同じ被害に遭わないよう注意を呼びかけた。 巧妙化するSNS型投資詐欺。県内の被害者は日々増え続けている。「儲かる」という甘い言葉に惑わされず、常に警戒心を持つことが、自身と大切な資産を守る鍵となるだろう。 (テレビ長崎)
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