中小企業は協同の時代へ 大阪八尾で経営改革案発表会
地域連携で価値を生み出す八尾モデル実現を
各社のプランに耳を傾ける助言者。人材育成の意欲を支持するとともに、一部で手厳しい指摘も忘れない。 「研修内容に会社の都合ばかりが先行し、社員の思いが反映されていないのではないか」「社員が納得できる制度でなければ、社員は動かない」「どんな会社にしたいのか。社員と話し合う前に、経営者自身が自分の考えをしっかり整理しておいた方がいい」 熱意が空回りしてはもったいない。抜本的改革を成功させるためにも、一体感重視の穏やかな対話路線にとどまることなく、真剣な思索や踏み込んだ討議の意義を強調した。 助言者が期待を寄せる地域連携型プランも飛び出した。人材を求める企業と子育てワーカーを結び、子どものすこやかな成長を最優先するワークシェアをきめ細かく実現する「子どもを中心に考える働き方改革」や、顧客とメーカーをつなぎ、手軽にすばやく商品を供給するものづくり案内所構想などだ。 地域の中小企業がネットワークを形成することで、共通の課題を解消して新しい価値を生み出す新展開も夢ではない。助言者が「八尾モデルの実現を」と背中を押す。 長丁場の発表会を通して伝わってきたのは、塾生たちのひたむきさと全体への目線だ。中小企業では経営トップに大きな権限が与えられている分だけ、トップの責任はひたすら重い。現代は社会が丸ごとハングリーだった時代とは違う。 たたきあげの創業者が強烈なキャラで社員をぐいぐい引っ張っていく。あるいは口が重いものの職人気質のがんこな『親父』が、働く厳しさや喜びを背中で雄弁に物語る。経営トップの生き方そのものが企業理念であり、企業戦士の生きた教本となる中小企業像は、もはや昭和の幻想かもしれない。 ひるがえって現代。引き続き経営者個人の力量が問われる一方で、チームの総合力が存在感を増す。従業員の多様な思いを引き出しながら、ある程度手間暇をかけて、企業理念や活動方針を練り込む。経営環境の変化に応じて、ルールを見直す労力を惜しまない。チームの発想を社外にも広げ、外部の専門家の知恵を借り、地域の仲間とも連携する協同の時代を迎えたといえそうだ。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)