光る君へ・渡邊圭祐にインタビュー、演じる藤原頼通を分析「ハリボテのような…」
頼通は「ハリボテ」? 演じる渡邊自身が分析
──演じている頼通は、どのような人物だと思っていますか? これは多分最後まで、僕の印象として変わらないと思っていることなのですが、すごく頭がいいです。藤原家の嫡男として「こうあるべき」というビジョンがちゃんとわかっているけど、その中身がともなっていない人でもあります。今風に言えば、親や先生が喜ぶような、「こうすることが正解でしょ?」という立ち振る舞いがわかっているけど、なぜそうするのかはよくわかっていないんですよ。だからハリボテというか、一枚はがしたら「あれ? 中身入ってないじゃん」みたいな人物だな、という風に思います。 ──現時点ではそつなく行動していますが、自分が政を動かす立場になってくると、そのハリボテ感が見えてしまうことになるのでしょうか? あの御嶽詣のときに「僕も行きます」と言って、道長に「お前、大丈夫か?」と聞かれて、ちょっと悩むシーンがあったと思うのですが、あれもやっぱり「御嶽詣についていくのが、嫡男として正解でしょ?」という行動で、(ついていく)理由を聞かれると「うーん」ってなっちゃうんです。 そういうことがどんどん繰り返されて「おや?」ってなっていきます。とは言っても、(第35回段階で)まだ16歳の設定ですから。今の段階では「まだ若いしな」という風にとらえてます。 ──ここから平等院鳳凰堂を作るような人になるという、立派なゴールがありますから。 これから道長が中身を詰めていき、周りの公卿とか姉弟にも支えてもらうことになります。いろんな「こうなっていくんだよ」という様を見ることで、頼通もいろいろ学んで、立派な人になっていくんじゃないでしょうか。 ──ちなみに頼通とまひろは、どういった関係になりますか? 普通に有名な作家さんに対する感じです。「あ、『源氏物語』読んでます」みたいな(笑)。道長と違って、そんなに深く絡むことはないと思います。 ■ 現世でも語り継がれている事実「ちょっと奇妙な感じ」 ──『光る君へ』に出演したことで、『源氏物語』や平安時代について、改めて考えたことはありますか? 自分の姉(彰子/見上愛)を助けた『源氏物語』が今も読まれているとか、自分の演じた役が建てた建物が現在も残っているとか、自分たちが(ドラマで)関わったものが、未だに現世でちゃんと語り継がれている。それは素晴らしいことではあるけれど、ちょっと奇妙な気もします。ほかにも「こういう実話があるんだよ」という役をやったことはありますけど、それとはジャンルが違う気がして。 ──1000年という時間のスケールが、そうさせているのかもしれないですね。 特に宇治に来ると、すごく頼通という人が尊敬されているのがわかります。僕は宮城県出身なので、仙台の伊達政宗公みたいだなあと(笑)。そういう意味では、すごくやりがいのある役をいただけたと思います。 あとは「『源氏物語』があるから、こういう小説が生まれた」とか、あの時代の人がいろんな日記を遺してくれたから、今があるとか。そういう文献があって、歴史が重なっていくことの素晴らしさみたいなものも、改めて感じています。 ──『光る君へ』がないと、それが途方もないことだったとは、なかなか気づかなかったかもしれないです。 そうですね。すごいなあと思いつつも、意外と人間の根底にあるものって、そんなに変化してないんだなということも再認識しました。人ってあんまり変わらないということを実感するけど、「変えようと思えば変えられることも、無限にあるんだよ」ということも、同時に教えてくれている気がします。 ──頼通の今後の見どころは。 父からバトンを受け継いで、政にガンガン関わっていくようになるんですが、そこから彼の苦悩が見えてきます。でも未熟だった部分が成熟していくさまも、ちょっとずつ見えてくると思うので、子どもを見守る感覚で、温かく見ていただけたら。 作品としても、まひろの最後をどういう風に描くんだろう? というのは、僕たちも楽しみにしているところ。見どころらしい見どころがまだまだたくさんあるので、ワクワクしながら放送を待っていただけるとうれしいです。 取材・文/吉永美和子