横浜DeNAの球団初のCS出場の背景に革新的経営力
池田社長が変えようと心がけてきたのが“空気感”である。 夏には「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」というスタジアムを青に染める恒例のイベントがあるが、毎年、 テーマ曲をチーム状態に合わせて変えている。「5人に3人が知っている曲を使い、100人に一人が気がついてくれればいいんです。そういう色んなタッチポイントを作って球場に来てもらうきっかけにしてもらえればいいんですよ」と池田社長は語っていたが、観客誘導のきっかけとしてだけでなく、スタジアムの空気、ひいては、チームの空気を変えたいという奥深い狙いもあったのである。 何も観客動員のアップだけで“空気”を変えたわけではない。 アレックス・ラミレス監督の招聘に代表されるチームマネジメントについてもフロント力が如何なく発揮された。池田社長は、以前の取材で「決してラミちゃんのイメージの残るパフォーマンス型監督として、呼んだわけではありません。異国である日本で、生活環境や野球の違いに順応して、あれだけの結果を残した人です。こういう人は孤独に強いんです。経営者と同じ。ラミレス監督は、負けてもぶれずに暗い空気を作りませんでした。そこにも期待をして監督招聘したわけです。4月に負けが込んだときに《いつか参った顔をしてしまうんじゃないか》と見ていましたが、その姿も見せずにぶれない姿勢をつらぬきました。 勝ったときは、何も言わない方がいいんです。コーチングがうまくいっているなら放置、駄目なところだけにマイクロマネージメント(部下への強い干渉)をすればいいんです。それができています。勝っているときは、グッドジョブで終わり、負けているときは、《あそこはどう考えていたんだ?》《なぜああなったんだ?》と、問題、原因に干渉しながら対応策につなげていく。ラミレス監督は、理想的な経営者に近いマネージャーだと思って見ています」と語っていた。 フロントも、最新兵器を持ち込んで現場をバックアップ。ピッチャーのボールの回転数まで細かくチェックできるレーダーによる分析装置を導入して、例えば、ドラフト1位のルーキー、今永の疲労度などのチェックに使い、ラミレス監督はそのデータを用いて、途中、2軍での調整期間を作ったりもした。 また、この5年間のドラフトでは、高田GM、吉田編成・スカウト部長が中心となり、「一番いい選手を取る」という方針を貫き、即戦力と中長期の展望を考えながら着実に戦力を積み上げてきた。