「キャッシュレス弱者」への支援策急務 高齢者ら現金払い多く 新紙幣発行で
7月3日の新紙幣発行でキャッシュレス化が進むとみられる一方、スマートフォンへの設定やセキュリティーへの不安が壁になり、現金で支払っている人も高齢者を中心に多い。「キャッシュレス弱者」への支援が求められる。 「現金で払わないと、いくら使ったか実感がなく不安」 昆布のつくだ煮を製造・販売する「舞昆のこうはら」(大阪市住之江区)の店舗を訪れる高齢者からは、そうした言葉が漏れるという。利用客の約7割が60代以上の高齢者で、現金決済が多い。手元の現金残高で支出を管理する利用客も少なくないといい、同社は「完全キャッシュレス化」には慎重だ。 効率化のため一部の店舗に導入している自動釣り銭機の新紙幣対応が進んでいないこともあり、同社は1日、7月の期間限定で、旧紙幣だけで買える「夏の福袋」を大阪府内全13店舗で売り出し、反応は上々という。 消費者庁の令和3年版消費者白書によると、調査に対して「キャッシュレス決済を使っている」と答えた人の割合は全体で58・6%。年齢別では30代の80・6%が最も高く、60代でも57・3%だったが、70歳以上では29・7%と少なかった。 高齢者は視力などが衰えることで、キャッシュレスの設定に必要なスマートフォンなどのIT機器を扱いづらくなり、従来通りの現金払いに頼る傾向があるとみられる。セキュリティーに対する不安も根強いとされる。 ただ、日本総合研究所関西経済研究センターの藤山光雄所長は「これまでスーパーなどでキャッシュレス決済が導入された際、財布から小銭を取り出したり、数えたりする手間が省けたことで『便利になった』と高齢者らに受け入れられてきた経緯がある」と指摘。 そのうえで「キャッシュレス決済について身近な人が教えることももちろんだが、店舗や企業がサポートすることで、長期的にみたときに(店員などの)人手不足の解消も期待される」と話す。(田村慶子、清水更沙)