変わる「果実定期便」〝産地限定で届けます〟消費拡大
ギフト専門 写真など一緒に
定額で旬の果実が毎月届く果実定期便サービスを特定の県産や直売所単位で打ち出し、消費を拡大する動きが出てきた。自宅用が一般的だった定期便をギフトとして提案するネットショップや、直売所が実店舗以外での販路拡大や産地ブランドの確立につなげる例が登場している。 贈答用の高級果実専門ネットショップ・肥後庵(熊本市)は、果実定期便サービス「ギフト用フルーツ定期便」を展開する。熊本県産に特化し、かんきつやメロンなどが毎月届く。従来の自宅用のサービスと違い、メッセージや写真を旬の果実と一緒に送ることができる。 主な利用者層は若い世代の夫婦で「両親や親戚、友人からもらった、結婚や出産祝いのお返しとしての利用が多い」(同社)という。出産祝いの返礼に赤ちゃんの写真を付けるなどして、贈られた側にも喜ばれている。 ふるさと納税の返礼品としても利用でき、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」では、熊本県の返礼品の人気ランキング1位を獲得するなど利用者は増加傾向だ。 同社は、高額な祝い品をくれた人へのお返しとして定期便を提案する。「一度に高額な品を贈るより気を使わせないで済むことや、一度きりでなく継続してお礼を伝えられるギフトが新鮮と感じる人が多く、人気が高まっているのではないか」と分析する。 同サービスは、単品と詰め合わせの2コースがあり、予算に合わせて3~12カ月の間で配送回数を選べる。3カ月コースが1万2600円。
直売所利用 高齢者に支持広がる
和歌山県のJA紀の里が運営する直売所「めっけもん広場」は、周年で果実を出荷できる産地の特徴を生かし果実定期便サービス「JA紀の里フルーツ定期便」を展開する。 主な利用者は、直売所の実店舗に通っていた客で「高齢化などを理由に来店が難しくなった人やその家族による代理注文が多い」(同JA直売課)という。一度手続きすれば特産の桃や柿などが月1回届く仕組みで、「買いに行くより楽でいい」と支持を広げる。価格は月々3590円。 直売所や生産者にとっては、実店舗以外で毎月一定の収入が確保できる。定期便で届いた果実を気に入り、単品をリピートして買ってくれる人が増えるなど「地元産果実の認知拡大やファンづくりができている」(同)という。 今後は、新規顧客獲得に向けて、関東圏へのPR活動や、果実消費が落ち込む若い世代の利用を想定した低価格な定期便サービスの実施などを予定する。(永井陵)
日本農業新聞