現役時代と同じ「株式だけ」では危険…定年前後になったら「ニコニコフィフティ投資戦略」にスイッチ【投資アドバイザーが解説】
定年後も株式で強気の運用を続けていいのだろうか…定年が近づいてくると多くの人が悩むものです。そんな人に向けて、『知識も時間もないですが、新NISAでほったらかし投資よりお金を増やしたいです』(KADOKAWA)から、著者の〈投資塾ゆう〉氏が、現役時代と変わらない投資スタイルでいることに警鐘を鳴らしつつ、おすすめのポートフォリオをご紹介します。 【早見表】年収別「会社員の手取り額」
60歳の時に大暴落に見舞われたら?
資産運用はなにも、老後の生活費だけが目的ではないでしょう。毎日の仕事から解放されて時間が自由になったら、憧れていたクルーズ船の旅や長期の海外旅行、あるいは趣味やライフワークに打ち込むために使いたいという人もいるでしょう。 こうしたお金の価値は、健康寿命によって大きく変わると私は考えています。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をいいます。 健康寿命は、男性なら70代前半まで、女性なら70代半ばまでが目安です。それよりも年齢が上がると、病気で行動が制限されたり、介護が必要になったり、そこまでいかなくても旅行や外出がおっくうになって、お金と体力が必要な活動が大幅に減る傾向があります。 このため、資産運用で増えたお金で第二の人生を楽しみたいというのなら、60代のうちに使っておくのが現実的です。「ようやくセカンドライフが始まった。さあお金を自由に使うぞ!」と意気込んだ時に、もしリーマンショックやITバブルのような暴落相場が来たらどうなるでしょうか。 [図表1]は、60歳の時にS&P500を2,000万円分持っている人の資産が、ITバブル崩壊とリーマンショックに見舞われたらどうなるかをシミュレーションしたチャートです。 80歳まで保有を続けていれば、20年で資産は2.5倍の5,000万円に成長させることができています。結果だけ見れば100点満点の運用といえるでしょうが、健康寿命である75歳までの15年間のうち、約13年間で元本割れをしていました。 時間に余裕があり身体も比較的元気な70代前半まで元本割れの状態が続き、本格的な衰えを感じる80歳以降に資産額がピークを迎えても、「それで資産運用をしていてよかった、増えたお金で人生を豊かにできた」といえるでしょうか。 せっかく定年後の人生を豊かにするための資産を形成しても、いざ使おうと思った矢先にこのような暴落に見舞われてしまうと悲惨というしかありません。リーマンショックは100年に1度の金融危機といわれてはいますが、あと100年は同じ規模の金融危機が来ないと決まっているわけではありません。 定年後もそのまま株式で運用を続けていると、こうした憂き目に遭う可能性がないとは言い切れないのです。