足立正生監督・脚本作『逃走、貫徹!』桐島聡役は古舘寛治 「やるしかないと思った」
古舘寛治が主演を務め、足立正生が監督・脚本を務めた映画『逃走、貫徹!(仮題)』が、7月上旬にクランクインすることが決定した。 【写真】監督・脚本の足立正生 本作は、半世紀に及ぶ逃亡の末に、今年の1月29日に病院で亡くなった、東アジア反日武装戦線元メンバー・桐島聡を描く人間ドラマ。 桐島聡は、1970年代の日本の新左翼過激派集団である東アジア反日武装戦線「さそり」のメンバー。1975年に同派による連続企業爆破事件の被疑者として全国に指名手配されたが、逃亡から約49年後の2024年1月25日に病院に担ぎ込まれ、4日後の1月29日に死亡した。その死亡の直前、担当医師に本名である「桐島聡」として死にたいと語ったという。なぜ自らの名前を名乗ったのか。 内田洋から桐島聡への回帰、そこには多くの謎と、逃亡生活の終焉と自らの死を予感した、桐島の決意が含まれている。桐島聡は、日雇い仕事で転々と移り住み、数十年前からは「内田洋」という偽名を使って神奈川県藤沢市内の工務店で住み込みで働き、古い木造2階建ての6畳の寮で一人暮らしをしていた。逃亡中は、1960~1970年代のブルースやロックなどの音楽好きでライブハウスに出入りし、そこで出会った仲間うちに知られていた。ジェームス・ブラウンやカルロス・サンタナを好み、月1回程度、音楽好きが集まる藤沢市内のライブバーに顔を出し、市内の別のバーでは「うーやん」と呼ばれており、来店しては赤ワインを好んで飲んだという。半世紀近くに及ぶ逃亡のなか、桐島は日本の欺瞞と凋落を、地方都市の部屋のなかから、絶対的な孤独の中で見つめていた。メンバーの獄中闘争、超法規措置により国外に出る仲間たち、自死を選択する者、バブルで浮かれる日本人、緩やかに確実に沈没してゆくこの日本、薄れゆく「革命」と対峙し、桐島は逃亡生活に何を見出そうとしたのか。 本作のカメラマンを務めたのは、足立と日本大学芸術学部映画学科からの学友であり、是枝裕和監督作品や多くのテレビドキュメンタリー、記録映画などのカメラマンとして知られる山崎裕。 ロフトグループの創業者で「ライブハウスを創った男」と称され、1070年代以降の日本ロック史を語るうえでは切り離すことのできない人物・平野悠がエグゼクティブプロデューサーを務めた。 桐島を演じるのは、足立監督が出演を熱望した古舘。古舘は「ある日、足立さんと初めて会った。やるしかないと思った。言葉にしがたい個人の魅力というのは人の動機付けになるんだなと驚いた」と主演を引き受けた際の思いを明かしている。 コメント 古舘寛治(桐島聡役) ある日、足立さんと初めて会った。やるしかないと思った。 言葉にしがたい個人の魅力というのは人の動機付けになるんだなと驚いた。 お金が動機でないということは反資本主義的であろう。 この映画のスタートとしてまずは上々である。 足立正生(監督・脚本) 警察による誤認手配に50年間追われ、辛苦の逃走を続けた青年・桐島聡が獲得しようとしたものは何か。 彼の生き様は、地獄の沙汰では済まない残虐世界だったのか。 しかし、同時に、死の間際に「私はキリシマサトシだ!」と名乗り出て表現し、獲得しようとしたものは何か。 それは、彼が生きた怨念となった「革命への確信」への証だったのだろう。それらは、映画でしか描けない。
リアルサウンド編集部