韓国・尹錫悦大統領が守り抜いてきた「愛妻」金建希夫人の背後まで迫ってきた司直の手
■ 真の権力者 最も大きな非難を受けたのは、尹大統領就任直後、大統領夫妻の写真が大統領室ではなく、金夫人のファンクラブを通じてメディアに公開されたことだろう。一般人は出入りが禁止された一級保安区域である大統領執務室で撮影された大統領夫妻の写真も、金夫人のファンクラブから公開され、大統領警護上の問題まで提起される大騒ぎとなった。 大統領室経由で公開された大統領夫妻の写真も、尹大統領より金夫人にフォーカスを合わせた写真が多かったことから、野党と一部メディアから批判を受けた。思えばこの時から「大統領室の実力者は尹大統領ではなく金建希夫人」という妙なうわさが出回りはじめた。 金夫人には、ドイツモーターズの株価操作で野党から特別検事(特検)の圧迫を受ける中でも、いろんな疑惑が次々と浮上した。新設予定のソウル―楊平高速道路の終点が金夫人一家の土地がある所に変更されたという疑惑、亡くなった父親の知人だと主張する左派牧師から高級ブランドバッグをプレゼントされた疑惑、尹大統領の候補時代に助けてくれた政治ブローカーのミョン・テギュン氏に、その代価としてミョン氏の側近が選挙で公認を受けられるように圧力をかけたという疑惑など、衝撃的な疑惑が次々と浮上した。 しかし、尹大統領は野党が国会で発議した金建希特検法を「政治攻勢だ」として繰り返し拒否し、愛妻を守った。総選挙を控えた新年記者会見でも金夫人がディオールバッグを受けた事件に関し、国民に謝罪するよりは弁解に汲々とするなど、問題の深刻性を主張する国民世論と相当な乖離を示した。
■ あからさまな「金建希ファースト」で支持者も離反 このような尹大統領の態度は、かつての検察総長時代に、文在寅政権の不正を捜査し、政権に立ち向かって「正義を守った」検事の姿とはあまりにもかけ離れた姿だった。「公正と常識の回復」という旗印で大統領に当選した尹錫悦大統領が、国民ではなく夫人だけを守ろうとする姿に国民は失望し、支持率は10%台まで急落したのだ。 こうした「金建希ファースト」の尹大統領の態度は、与党との関係にも変化をもたらした。金夫人と韓東勲(ハン・ドンフン)国民の力代表との権力争いが生じたことをきっかけに、尹大統領は国民の力とも疎遠になってしまったのだ。 今年4月の総選挙の過程で、選挙対策委員長を任された韓東勲代表だが、彼の側近が金夫人をフランス革命の導火線となったマリー・アントワネット王妃にたとえたところ、これに尹大統領が激怒、韓代表に対し選挙対策委員長を辞任するよう要求した。 さらに、金夫人ラインの一員とされる元大統領室行政官がネットメディアの記者に対して「韓東勲代表を攻撃すれば金建希夫人が喜ぶだろう」と韓代表への攻撃をそそのかしている通話内容が暴露されると、韓代表は大統領室の金夫人ラインを排除することを尹大統領に公開要求するに至る。これに対して大統領室は「韓東勲ラインこそ国民の力党を牛耳っている」と反論し、尹錫悦大統領と韓代表の関係は「同志から敵」へ急変したのだった。