東京23区に横たわる「学歴格差」と「所得」の実態…大卒者が最も多く暮らすのは「文京区」、最も少ないのは「足立区」
23区の学歴格差…大卒者の割合が最も多いのは「文京区」
その区の住民のなかで大卒者(大学院卒含む、短大卒は含まず。『令和2年国勢調査』)が占める割合は、区によって、かなりの開きがある。 23区で大卒者がもっとも多く暮らしているのは文京区で、43.1%となっている。次いで2位が中央区の42.1%、3位が千代田区の40.0%、4位が杉並区の37.7%、5位が品川区の36.3%である。 反対に、住民に占める大卒者の割合がもっとも少ない区は足立区で、17.8%だ。次いで葛飾区の21.4%、江戸川区の21.6%となっている。この3区はいずれも大学進学率が低い区であり、とくに足立区と葛飾区は、進学率でどちらもワースト3に入っている。 また、大卒者割合が上位の区と下位の区では、2倍以上の開きがあることがわかる。じつは、この大卒者割合と平均所得には大きな関連が見られる。大卒者割合上位3区の文京区、中央区、千代田区は、平均所得においても上位の区だ。 一方、大卒者割合が少ない足立区、葛飾区、江戸川区は、平均所得においても下位グループであり、とくに足立区と葛飾区はワースト1、2位である。
大卒者割合・平均所得・私立中学進学率の共通性
さらにもうひとつ興味深いデータがある。私立中学進学率だ。 東京都の『令和5年度公立学校統計調査報告書』によると、私立中学進学率トップ3は、文京区49%、中央区43%、港区42%で、ワースト3は、江戸川区11%、足立区13%、葛飾区14%である。 文京区、中央区は大卒者割合でもトップ3に入り(港区は9位)、江戸川区、足立区、葛飾区は同じく大卒者割合でワースト3の区である。 そもそも、日本の社会構造上、大卒者とそれ以外では生涯賃金に大きな開きが出る。学校卒業後にフルタイムの正社員を続けた場合の60歳までの生涯賃金(退職金を含めない)を比べたとき、男性の場合は大学卒で2億5,000万円、高校卒で2億円、女性の場合は大学卒で2億円、高校卒で1億5,000万円となっており、男女とも5,000万円もの差が出るのだ(『ユースフル労働統計2023』)。 以上のことからわかるのは、大学卒の親は高収入の職に就きやすいため所得が高く、その子どもの私立中学進学率(イコール中高一貫校進学率と考えられる)も高くなる傾向が見られるということだ。 もちろん、公立の中学校に入学しても、将来的に大学・大学院を卒業し、高所得を得るケースはいくらでもある。 ただ、東京23区においては、大卒者割合・平均所得・私立中学進学率には共通性があり、区によって大きな格差があることも事実である。 榊 淳司(監修) 不動産ジャーナリスト 東京・首都圏 後悔しない住環境リサーチの会(著)
榊 淳司,東京・首都圏 後悔しない住環境リサーチの会
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