ホンダの元祖アドベンチャーは原付だった!? 極太タイヤの「ノーティダックスホンダCY50」とは
アメリカンカスタム風味のオールラウンダー
1965年の運転免許制度の変更により、普通自動車免許で運転できるバイクが原動機付自転車だけになったこともあり、その後のバイクメーカーは原付車種を充実させていきます。実用車からスポーツバイク、モペット、そして原付と相性の良かったレジャーバイクまで、バイクメーカー各社から魅力的な排気量50ccクラスのバイクがどんどんリリースされ、原付ブームは盛り上がっていきました。 【画像】ホンダ「NAUTY DAX HONDA CY50」(1973年型)の詳細を画像で見る(8枚)
ホンダはレジャーバイクのカテゴリーに「モンキーZ50M」(1967年)や「ダックスホンダST50」(1969年)を投入し、続いて1973年に「NAUTY DAX HONDA CY50(ノーティダックスホンダCY50)」(以下、ノーディダックス)を発売します。 「ノーティ」とは「NAUGHTY=わんぱく、イタズラな」という単語を短縮したものと言われています。 「ノーティダックス」の大きな特徴は、幅5.4インチ、ホイール径10インチの低空気圧の極太小径タイヤです。タイヤの幅は「スーパーカブ」の倍の太さとなっており、レジャーバイクのレベルとしてはオフロードの走破性に優れています。 モトクロスの場合は、大きな凸凹を乗り越えながら速く走るために、フロント21インチの大径タイヤが定番になっています。一方、ホンダはモンキー/ダックスや輸出モデル「US90」などの経験で、低空気圧の太いタイヤが砂地やラフ路面でグリップが良いことを知っていました。同時に太いタイヤと低いシート高の方が手軽に未舗装路を楽しめる事も経験していたはずです。 太くて低空気圧のタイヤは路面に接地する面積が増えて、その分だけ滑りやすい路面でもバイクを前に進める力が伝わりやすくなります。
一方、舗装路では空気圧が低過ぎるとハンドルが重くなったり、逆に滑りやすかったりするので「ノーティダックス」のベストなタイヤ空気圧は0.8kg/cm3と設定されていました。 太いことでエアボリュームが増えて乗り心地が良くなるメリットもありました。低空気圧極太タイヤは他社モデルが先に採用していましたが「ノーティダックス」にはもうひとつ別の特徴があります。 それはアメリカンチョッパーカスタム的なデザインです。旅に誘われるようなそのデザインは、「冒険車」とニックネームを付けられています。 原付バイクですが、モンキー/ダックスよりも遠くの隣街まで、あるいは行ったことのない峠を越えて知らない野山へ、そしてそこが未舗装路でも特別なテクニックなしに楽しんで帰って来れる、それが「ノーティダックス」でした。