『龍が如く8外伝 パイレーツ イン ハワイ』横山昌義氏インタビュー。海賊船を使った特別な遊びも!? 過去作にはなかった演出も盛り込んだ挑戦作
2025年2月28日に発売予定の『龍が如く』シリーズ最新作『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』(パイレーツ イン ハワイ。以下、龍が如く8外伝)。シリーズでも屈指の人気キャラクター・真島吾朗が初の単独主人公となる本作では、記憶喪失となった真島が海賊になるという驚きの展開、豪華なキャストや新たな舞台などが早くも話題を呼んでいる。 【記事の画像(8枚)を見る】 果たして本作はどのような制作過程を経て、どのような物語を紡ごうとしているのか。“龍が如くスタジオ”代表である横山昌義氏にお話をうかがった。 ※本インタビューは2024年9月6日に実施したものです。 ※本インタビューは2024年9月26日発売の週刊ファミ通(2024年10月10日号/No.1867)に掲載のものとなります。後日、内容を追記のうえ更新予定です。 横山昌義(よこやままさよし): 初代『龍が如く』から脚本や演出などを担当してきた、現スタジオ代表。本作でもコンセプト立案やシナリオなど、作品の根幹を担う重要なパートに制作総指揮という立場で携わる。 もしも真島がハワイに行ったら……? 浮かんだ姿が海賊でした ――今回の新作発表は驚きもあり、「こう来たか!」という印象でした。真島が海賊になるというとんでもない話なのに、妙に納得感もあって(笑)。: 横山: あの服装は真島によく似合っていますよね。キービジュアルだけを見ると一見ギャグっぽさも感じるかもしれませんが、本筋はしっかりとしたドラマを描いていますので、その点はご安心ください。 ――本質は、ちゃんと『龍が如く』であると。ちなみに真島を主人公にした経緯をお聞かせいただけますか? 横山: 前提の話として、我々は昨年『龍が如く7外伝 名を消した男』(以下、龍が如く7外伝)で、“ひとつのナンバリング作品の裏側、別の一面を描く”という新しい展開に挑戦しました。外伝というコンパクトな作品が皆さんに受け入れてもらえるかは一種の賭けでしたが、結果としてかなりの評価をいただけました。そして、この外伝というスタイルがひとつの形として受け入れてもらえたことで、シリーズをより濃く展開することができるようになったわけです。 ――なるほど。 横山: それを踏まえ、『龍が如く8』からの新たな広がりを作るとして……「描ききれなかった部分はどこだろう?」と考えたときに、いちばん必要だと感じたのが、真島吾朗、冴島大河、堂島大吾のその後でした。桐生の言葉を受けて、極道のツケを生きて背負う覚悟を決めた彼らは、あの戦いの後に何かをやったはずなんです。 ――確かにそうですね。 横山: ただ、それをそのまま描いても新鮮な驚きにはつながらないので、さらに別の切り口も必要だと考えました。そこで、仮に“真島がハワイに行ったとしたらどうなるか”を想像したとき……浮かんできた姿が「海賊」だったんです(笑)。 ――狙い通り、インパクトは強烈でした(笑)。: 横山: そこで、すぐチームの幹部にその設定をメールしたのですが、みんな「ありえそうですね」とノッてきてくれたので、そこから企画と開発を進めた感じです。タイミング的には 『龍が如く8』の発売より少し前ぐらいでした。 ――相変わらず、「龍が如くスタジオ」の開発期間がとてつもなく短いというか……今回はこれまで以上に早いですね。 横山: 外伝の開発は一度経験済みなので、慣れもあると思いますが、全員が頑張ってくれたおかげですね。進捗も、とても順調です。 ――外伝ということですが、ボリューム感はどの程度になるのでしょう? 横山: メインストーリーは『龍が如く7外伝』の約1.3~1.4倍なので、あまり寄り道せずにまっすぐプレイすれば20時間程度でエンディングに到達できると思います。一方、アドベンチャー部分はハワイのマップに加え、海上やマッドランティンスなどの新しい島が加わったことで、かなり規模が大きくなっています。正確に計ってはいませんが、広さで言うなら『龍が如く7外伝』の数倍の規模感になりそうです(笑)。 ――海上という気になるワードが出ましたが? 横山: 真島は自分の船で海も移動できます。『龍が如く8』では行けなかった、ハワイの近くにある島がたくさん登場しますよ。 ――おお! ちなみに、ハワイというのは『龍が如く8』で行けたエリアのほとんど、という認識でいいのでしょうか? 横山: 第5地区などの一部のエリアは、真島にとって用事がない場所なので行けませんが、ほとんどのエリアに行けます。 ――遊びを見つけるたびに寄り道していったら……かなりたっぷりと遊べそうですね。 横山: ええ。海賊になるからには、真島の船となるゴロー丸を使った特別な遊びも用意しているので、ぜひ楽しみにしていてください。 ――海賊船を使う遊びと聞くだけで、いろいろ想像が膨らみます。 横山: ちなみに、本音を言うと「ハワイを『龍が如く8』だけで終わらせるのはもったいない」と思ったことも、本作を作ろうと思った大きな理由のひとつです。 ――あれだけ巨大で作り込まれたマップですからね。新作の舞台としてハワイを使うことを予想したファンもいたと思います。 横山: そうでしょうね。ハワイは、神室町や横浜・伊勢佐木異人町と違って、次回作の物語にハマるかわからない舞台ですから。実際に新作が動き出したら、また別の街をイチから作る可能性もあるので、ここで使い切ろう、と(笑)。 宝探しという要素がひとつのキーワードになります ――続いてはストーリーについてお伺いします。真島はハワイで記憶喪失になっているようですが、そもそもなぜ彼はハワイへ向かったのでしょうか?: 横山: 本作は『龍が如く8』の後日談になります。『龍が如く8』では、極道たちが核のゴミをネレ島に残してしまいました。それに対し真島を始めとした多くの人間が「核のゴミをそのまま放置するわけにはいかない」と考えることは自然です。 ――なるほど。 横山: ただ、真島にはそれとは別に、個人的な目的もあったりするのですが、ハワイに到着したあと、事故に遭ってしまった。浜辺に打ち上げられていたところを、ノアという少年に助けられるわけです。 ――真島は、その事故が原因で記憶喪失になるのですね? 横山: はい。ただ、記憶喪失であろうと真島は真島なので、きっとまわりを巻き込んで動きだすに違いなくて……。そんなわけで、本作では真島とノアのふたりがドラマの中心になります。まずはゲーム開始からほどなくして、真島、ノア、そしてノアの父親であるジェイソンが、船上でミュージカルを披露するのですが。 ――ミュージカル!? 横山: ええ、ミュージカルです(笑)。とある理由からノアは過保護に育てられていて、故郷の島から出たことがない。そんなノアは、出会った真島が故郷の島から自分を連れ出し、自由にしてくれることを期待しています。つまり「ひとりの少年の夢を、真島が男としてどう叶えていくか」がストーリーの軸になっていくわけです。ただ、その背景には日本の極道が関わる核のゴミを巡る騒動があり、本来は当事者である真島が記憶喪失のままそこに巻き込まれていくので、事態はより混迷を極めていきます。 ――相変わらず、先の展開がまったく読めそうにないですね(笑)。ただ、ノアたちと冒険に出る、ということはわかりました。 横山: その冒険ですが、いわゆる海賊モノの定番である“宝探し”がキーワードになっています。この海域に伝説の財宝をかかえた船が沈んでおり、マッドランティンスという島に集う海賊たちが、こぞってその財宝を狙っている……といった感じです。 ――海賊というより、トレジャーハンターのようなイメージに近いかもしれませんね。 横山: 本作の舞台は現代なので、本当の意味での海賊はほとんどおらず、マフィアなどがビジネスのひとつとして海賊業に手を出しているような感じです。だから、彼らの服装も基本的には現実と変わらないのですが、なかにはかつての海賊に憧れてコスプレをしている者もいます。真島の格好も、たまたま最初に出会った海賊がこの格好だったので、彼がおもしろがって着ているだけなのです。 ――真島らしい(笑)。ちなみに、そのマフィアというのはどういう組織なのでしょうか? 横山: まだ詳細は明かせませんが、マフィアだけでなく複数の団体が登場します。そのひとつは『龍が如く8』でも登場した宗教団体のパレカナです。 ――前作でパレカナのトップがいなくなりましたが、団体としては存続しているのですね? 横山: 裏稼業を抜きにしても、宗教としてのパレカナはハワイに根付いているので、そうそう消滅したりはしません。 本作では肩書きを持たない“素の真島”を見ることになります ――ストーリーについて少し踏み込んだ質問になりますが、『龍が如く7外伝』では、桐生一馬という男の生き様と、人生の振り返りが重要な軸になっていました。本作でも、”真島の人生の清算”的な要素はあるのでしょうか?: 横山: そこに関しては、あまり触れていません。そもそも、舞台が異国の地ゆえに、真島の過去を知る人はほとんどいません。さらに当の本人も記憶を失っているので、“伝説の極道である真島吾朗”は存在しないんです。言ってしまえば、肩書を持たない素の真島吾朗を見ることになるので、ずっとシリーズを追いかけてきた方も、『龍が如く8』から遊び始めた方も、同じように新鮮な気持ちで遊べると思います。 ――真島は、『龍が如く0』を経て極道としてのパーソナリティーが確立しましたが、本作では“それが起こらなかったifの真島”が見られる、というイメージでいいのでしょうか? 横山: そういう見かたもできますね。記憶喪失になった直後は、周囲の人間とのやり取りを通じて「どうやら俺は悪いやつらしい」、「人よりもケンカが強いっぽい」という感じで、自分自身を認識していきます。なので、いつもの真島節のような反応はほとんどありません。たまに「ヒヒヒ」が漏れ出るぐらいです。 ――そんな状態から、かつての自分を取り戻していくわけですね。 横山: はい。さまざまな行動をとりながら、少しずつ記憶の穴を埋めてく形です。だからある意味、本作は『龍が如く』という冠が付いているゲームの中で、もっとも過去の設定を引きずっていない作品と言えそうです。ただ我々としては、あくまでおもしろいストーリーを作ることを大前提としていて、とくに新規プレイヤーを取り込むために意図的に狙ったわけではありません。「結果的にこうなった」感が強いですね。 ――なるほど。あとはアクションによるバトルに関しても、気になっているのですが。 横山: バトルスタイルは、“狂犬”と“パイレーツ”のふたつが用意されています。“狂犬”は、殴りもあり、ドスも使うという、いつもの真島スタイルですね。“パイレーツ”は、メインイラストにも描かれているカトラスという剣を振り回すので、手触りとしては『龍が如く 維新!』などに近いかもしれません。なお、同じ外伝として比較されやすいと思うので先に述べておきますと、『龍が如く7外伝』のアクションは“桐生一馬”というベースがあってこそのものです。それに対し、今回は真島という別の人物がベースなので、バトルはもっと派手になりますし、桐生よりもスピード感やユニークさを味わえる仕上がりになっていると思います。 秋山さんがいなければミナト区系女子は成立しなかった ――本作のキャスト陣なのですが、過去作での出演経験がある方々が多くキャスティングされている印象です。これにはなにか意図があるのでしょうか?: 横山: さきほど触れたミュージカルのエピソードもそうなのですが、本作は全体的にこれまでの『龍が如く』シリーズでは見られなかったような演出を意識的に多く盛り込んでいます。そのチャレンジに対して、しっかりと安心できるクオリティーを担保するためには、キャスティングは保守的にいこうと。ですから今回はまず、過去作を経て信頼しているキャストの皆さんにお声がけさせていただきました。 ――なるほど。「過去作のキャラクターとキャストが同じだから、本作では……」といったメタ視点は不要ということですね。 横山: はい、そこは気にしないでください。演技に関してですが、ノア役のファーストサマーウイカさんが本当にスゴかった。ノアの声を聞いただけでキャストを当てられる人は少ないんじゃないかと思うぐらい、見事に少年の声を演じてくれました。さきほどお話したミュージカルシーンも、彼女は最初から最後まで少年の声のまま歌いきったんですよ。ミュージカルともなれば本来の声が顔を出しそうなものですが、ずっとノアのまま。今回の収録で確信しましたが、天才ですよ、彼女は! ――早く観てみたいです! 横山: ほかの主要メンバーで言うと、ジェイソンを演じる松田賢二さんは『龍が如く』シリーズ初出演ですが、ミュージカルも経験豊富ですし、その演技力は実写のころからよく存じていたので、安心して任せられました。青木崇高さんも『龍が如く』は初ですが、その演技力を見込んでお願いしました。大東駿介さんは長い付き合いのある『龍が如く』経験者ですし、演技力にも信頼を置いています。谷田歩さんにいたっては、20年近く『龍が如く』のナレーションを担当していただいてますからね。 ――ただ、秋山竜次(ロバート)さんの出演は驚きでした。 横山: 秋山さんについてお話すると、じつは“ミナト区系女子オーディション”の企画は秋山さんなくして成立しなかったんですよ。 ――そうなんですか!? ミナト区系女子の方々と秋山さんは、どのような絡みかたをしてくるのでしょうか? 横山: 事の始まりは、秋山さんが演じる、真島の腹心となるマサルが「日本で流行っているらしいミナト区系女子と飲んでみたいな」的なことを言い出したのがきっかけです。それを知った真島は、彼の夢のサポートをしようと、ハワイでミナト区系っぽい女性に声をかけては仲よくなり、マサルのためにパーティーを開こうと奮闘します。 ――てっきり、それぞれの港に女の子がいるから“ミナト”なのかと思ったら……本当にミナト区系っぽい女性という扱いなんですね(笑)。 横山: 『龍が如く』シリーズとしては、どこかしらに日本のカルチャーを取り入れたいという気持ちがありまして。近年の話題の中で、ミナト区系女子に関しては取りこぼしていたので、扱ってみたいなと(笑)。 ――なるほど。お話を聞く限り、真島とミナト区系女子がイチャイチャするというわけではなさそうですね。 横山: はい、全部マサルです。そして、この遊びのご褒美は、フル実写によるマサルとミナト区系女子のパーティーシーンなんですよ。 ――フル実写! だからこそのオーディションであり、秋山さんなんですね(笑)。 横山: もう、これは秋山さんじゃないとおもしろくできないだろうと考えて、彼ありきでキャスティングしました。ある意味、キーマン中のキーマンですね(笑)。また、実写収録の際には、天才である秋山さんの構成作家としての腕も、存分に振るってもらいました。 RGG SUMMIT 2024より ――笑いの部分でもかなり期待できそうなお話なので、とても楽しみです! では最後に、本作の初お目見えとなる東京ゲームショウ2024を楽しみにしている方々に向けて、見どころを教えていただけますか?: 横山: 去年と同じ規模感で試遊台を用意して、本作の遊び心地が確実に伝わる体験ができるようにしています。また、一般公開日のステージではミュージカルショーなども予定しているので、我々が作り上げたものを見て、聞いて、遊んで、全身で受け止めてもらえれば。 ――試遊も、ショーも楽しみです! 横山: そして、とくに注目してほしいのが真島の等身大人形です。「作るからには気合を入れるぞ!」ということで、最新技術を使ってポージングすらも変えられるようなものが完成しました。ぜひご期待ください。