住んでから「事故物件」と知りました。大家さんは事前に説明する義務があるのではないですか?
最近では好んで住みたがる人もいるといわれる事故物件ですが、まだまだ一般的には避けたいと思う人が大多数です。だからこそ、事故物件であることを隠している大家さんもいます。そこで、大家さんの説明責任について考えてみます。
事故物件は、法律の世界では「心理的瑕疵(かし)」といわれている
一般的な賃貸マンションやアパートにおける「事故物件」とは、自殺や他殺で人が死んだ部屋を指します。例えば、あるマンションの101号室で人が自殺した場合、101号室がいわゆる「事故物件」となります。 そしてこのような事故物件は、法律の世界では「心理的瑕疵物件」に当たります。事故物件は、人が死んでいるとはいえ、清掃などが済んでいれば、物理的に人の住めない環境ではありません。しかし、人の死んだ場所で寝食をするに当たり、多くの人が抵抗を感じます。そこで、物理的な瑕疵(欠陥)と区別した「心理的な瑕疵(欠陥)のある物件」として、事故物件は心理的瑕疵物件と呼ばれています。 ただし、人の死のあった部屋の全てが事故物件に該当するわけではありません。老衰や持病による死亡といった、いわゆる自然死については、一般的には事故物件扱いされず、告知義務はないと考えられます。なぜなら「そういった死は当然にいつか起こることが予見されるもので、大きな心理的抵抗を生じるものではない」と法律上では判断されるからです。
物件が事故物件であれば、大家さんは借り主にそれを告げる必要がある
原則として、不動産の貸主は借り主に対して、事故物件であることを「心理的瑕疵物件」として告知しなければなりません。つまり大家さんには、事故物件であることを事前に説明する義務があるのです。 具体的には入居のもっと前、賃貸契約の時点で、契約に関する重要な事項の説明がなされるのですが、そこで心理的瑕疵として説明がなされていなければなりません。 もし、事故物件であることが告げられなかった場合、後からそれを知ったとき、入居者は大家さんに対して契約の解除や損害賠償の請求をすることができると考えられます。場合によっては、それらと合わせて慰謝料の請求も可能になるでしょう。 ただし、国土交通省のガイドラインによれば、告知義務はその死が発覚してからおおむね3年とされています。4年や5年も前に事故物件となった場合にまで、契約の解除や損害賠償を請求することは難しいでしょう。