「人気じゃないの?」カードゲーム市場に異変? 有名カードゲームショップが突如閉店……価格下落も一因か
■カードゲーム市場に一体何が? 6月4日、MTG(マジック:ザ・ギャザリング)専門店「ショップあきあき」が突如、倒産したと発表した。同店のホームページによると、「諸般の事情により本日6月4日をもちまして閉店し、一切の営業を終了することになりました。今後は、弁護士の協力のもと、東京地方裁判所に対して破産手続きの申立てを行う予定となっています」とのことである。 【写真】チェンソーマン、ディズニー、陰の実力者になりたくて!の魅力的なトレカ 老舗の突然の発表に、ネット上では様々な憶測が飛び交う状態になっている。「代金を振り込んだのに発送されていない」などのコメントが相次いでおり、相当な被害が出ている可能性が高い。 今年に入ってから、カードゲームショップの閉店が相次いでいるという。閉店の背景には、MTGやポケモンカードゲームに代表されるトレーディングカードゲームの二次流通価格の著しい値崩れや、真贋鑑定の難しさなどが背景にあると考えられる。また、競合する店が増えすぎたことや、投機目的でカードを買い始めた人々のカード離れを指摘する声もある。 ■ポケモンカード投資をやめた医師、その理由は? たびたびニュースにもなったポケモンカードはコロナ騒動の期間中、爆発的に人気に火が付いた。歴史的な株高に乗じて利益を出した投資家や、開業医を中心とした医療関係者などには、この数年間で大きな富を築いた例がみられた。そうしたマネーが現物資産の市場に転がり込み、カードゲームをはじめ、高級腕時計、アンティークコイン、ソフビなどのヴィンテージ玩具などが軒並み急騰した。 ネット上では“ポケカ投資”なる言葉が生まれ、筆者の周りでも、「ポケモンなんてまったく興味がない」という富裕層が、現物資産としてカードを買い始める異様な光景が見られた。しかし、コロナワクチン接種事業で富を築いた筆者の知人の医師A氏は、金地金や高級腕時計とともにMTGやポケモンカードを買っていたが、「現物資産として魅力を感じない」と考え、すぐに撤退した。その理由をこう語る。 「実物を見て、まず高級感がなかった。ただの紙じゃん、と(笑)。素材が紙なので、金地金のように素材そのものに価値があるわけではないし、簡単に偽造できそうだと思ったのが一番の要因ですね。それに、やろうと思えばメーカーがいくらでも再販できてしまうでしょう。現物資産として優れているとは思えませんでした」 A氏のように、作品への愛情がない人がカードの価格を釣り上げていたのは間違いないだろう。近年、ポケモンカードが発売される日に列を作った人々の中には、明らかに転売目的な人が多数混じっていたという話を聞く。しかし、そういった人々は結局愛情も何もないので、撤退するのも早かったようだ。そんな一人であるA氏はこう続ける。 「もちろん、カードのキャラが好きだと言う人にとってはいいのかもしれないけれど、僕は別に好きなわけではないので、これ以上手を出すべき対象ではないと考えました。あくまでも研究のつもりでしたし、十数枚買って、すぐ売っちゃいましたよ。もっとも、その時は価格が上昇していたので、それなりに儲かってしまいましたけれど(笑)」 ■「がんばリーリエ」の現在の価格は? さて、昨年はニュースでもたびたび取り上げられたポケモンカードだが、今年に入ってからはほとんど話題に上らなくなった。YouTuberなどが人気を煽ったといわれるポケモンカード、通称「がんばリーリエ」の価格も下落しつつある。 毎月、ネット上に価格を公表しているスニーカーダンクのウェブサイトによると、「スニダントレカ秋葉原店」の5月22日現在の価格は、鑑定機関でもっとも状態が良いと評価されたPSA10というランクの品物が、186万円であった。 それでもとんでもなく高価であることには変わりないのだが、たったの1年前、2023年6月10日にはなんと1050万円という価格をつけていたと考えると、5分の1以下になってしまったといえる。そのほかのポケモンカードも軒並み著しい値崩れを起こしており、23年に投機目的で購入した人は含み損を抱えているかもしれない。 人気の高さゆえに偽物も出回るようになり、なんとPSAなどの鑑定機関がつくったケースまで偽造する者まで現れた。偽物のクオリティも上がっており、ショップとのいたちごっこが続く。あまりに急に偽物が増えたため、店員の知識が追い付かない例も少なくなかったとされ、特定のカードは「買い取り不可」としたショップも多かった。 カードショップはタピオカ屋などと同様に狭いスペースでも始められるため、坪単価の利益率が非常に高く、業者側も「儲かる」「人気がある」という安直な理由で参入する例が目立った。カードを投機商品としてしか見ていない業者は、知識面でも乏しいケースが見られた。こうした店が今年に入ってから淘汰され始めているようであるが、「ショップあきあき」の場合は老舗であるだけに、その要因は不明である。
文=山内貴範