不動産のプロが教える「資産性が落ちにくい住居」4つの条件
永住予定のため、資産性を考慮する必要はない?
不動産市場は三極化し、価格を維持、もしくは価格の上昇も見込めるような地域は、全体の10~15%に過ぎません。残りの9割近くが、程度の差こそあれ将来的に値下がりしていくのが、日本の不動産市場の実情です。 値下がりしにくい地域で不動産を買うためには、先に紹介した4つのトレンド条件をなるべく満たす必要がありますが、完璧に条件に合った物件はすでに高額です。そのため、少しずつ条件を緩和しながら、予算と見合う物件を探すことになるでしょう。 もっとも「永住の予定だから、将来的に売却するつもりもないので、不動産価格が下落したとしても別に構わない」と考えるのであれば、郊外の駅から離れたエリアなどで、手頃な物件を見つけることはできます。 ただ将来的に相続の発生や、高齢になって介護施設への入居が必要になったり、若いときに気に入っていた住環境が、高齢になって合わなくなることもあるはずです。自分が年をとって、周囲はファミリーだらけだと居心地が悪くなるかもしれませんし、若いときには気にならなかった駅や病院からの距離を、負担に感じるかもしれません。 そこで持ち家を売ろうとしても、もともと不動産価格が下落傾向のエリアで家を買っていると、資産性が損なわれて売るに売れないリスクがあります。実際、老人ホームに入るために家を売ろうとしても売れず、苦労したというような話はそこかしこで耳にします。 投資として不動産を購入する場合は、いかに物件を高く売却するかという「出口戦略」を念頭に置きます。一方、居住用不動産を買う場合には、売るときのことを視野に入れていない人が多くいます。最初は永住するつもりでも、状況がそれを許さなくなるケースが往々にしてあるので、売却の可能性も頭の片隅に置きつつ、物件探しをすべきでしょう。 といっても、出口を考えて人気のタワマンを無理して買うのが正解とは限りません。収入に見合わない住宅ローンを背負うと、将来資金ショートを起こすリスクが高くなります。 資金的な理由で、不動産価格が下落しそうな地域を選ばざるを得なかった場合、なるべく価格の下落がゆるやかな地域(都心から遠すぎず、駅から離れすぎない)を選ぶほか、不動産の売却益をあてにし過ぎずに老後の計画を立てる必要がありそうです。
長嶋修(不動産コンサルタント),さくら事務所