ようやく発足したフランス新政権のはかない命……極右はいつ解散総選挙のカードを切るのか
そうした懸念を払拭するためか、これまでマクロン大統領の下で政権を支えた重鎮は入閣せず、新たに閣僚に就任した議員のほとんどは、閣僚経験のない若手が中心だ。 ■内相は「移民への強硬姿勢」という配慮 財政再建を託されたのは、経済・財務・産業相に就く大統領支持会派のアルマン氏だが、財政分野での政策理念や手腕は未知数だ。欧州・外務相や国防相が大統領支持会派の所属議員で固められたのは、大統領の専権事項とされる外交や国防分野での影響力を確保する狙いがあるのだろう。
内相には移民に対する強硬姿勢で知られる共和党のルタイヨー氏が就き、これには大統領支持会派から反発の声も聞かれた。 議会の過半数を確保していないバルニエ内閣が存続するためには、政権奪取の機会を奪われた極右政党・国民連合(RN)が左派会派の提出する内閣不信任案に賛成しないことが必要となる。ルタイヨー氏の内相就任は、移民規制の強化を訴える極右勢力に配慮した側面が大きい。 政権発足の機会を奪われた形の左派会派は、バルニエ政権を極右に支えられた正統性を欠く政権であるとして対決色を強めている。
9月21日には早速、フランス各地で左派が主導する大規模な抗議デモが行われた。政権発足に先駆けて、左派会派に加わる極左政党は、マクロン大統領の弾劾手続きを開始した。 弾劾には上下両院で3分の2以上の賛成が必要で、こうした試みが成功する可能性は低い。ただ、左派会派は10月1日に予定される夏季休暇明けの国民議会でバルニエ政権に対する内閣不信任案を提出することを示唆している。 左派会派と極右勢力の合計議席は335議席と議会の過半数(289議席)を上回り、両勢力がお互いの内閣不信任案に賛成票を投じれば、政権打倒がいつでも可能な状況にある。
■解散総選挙は1年に1回、「いつやるか」 憲法の取り決めにより、国民議会の解散・総選挙は1年に1回しかできない。現時点で政権を倒しても、マクロン大統領がバルニエ氏に代わる新たな首相を任命するだけに終わるうえ、政局混乱を招いたと批判されかねない。極右勢力はひとまず政権発足を容認する構えだが、マクロン大統領にとって最も政治的な打撃が大きいタイミングを見計らっているのだろう。 議会の過半数を握っていないバルニエ政権は難しい議会運営を迫られる。与党が提出する法案の多くに、左派連合や極右勢力が反対票を投じることが予想され、通常の立法手続きで法案を成立させるのは困難を極める。