必須でないフォグランプの定義と正しい使い方【MFクルマなんでもラウンジ】 No.9
前回の「ラウンジ」では、義務化された最新オートライトの問題点について言及した。 かなりたくさんの方に読まれたので、今回は調子に乗って引き続きライトつながりのお話をしていく。 テーマは「フォグランプ」。 TEXT/PHOTO:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)あらためて考えよう「フォグランプ」とは何ぞや? 【他の写真を見る】フォグランプの個数に点灯状態の合法・非合法 自動車にはさまざまなランプがついている。フロントには車幅灯(スモール)、ヘッドランプ、ターンシグナル。後ろに目をやれば、テール&ストップ、ターンシグナル、リバースランプ・・・サイドにもターンシグナルがある。 これらが必須のものであるいっぽう、フォグランプはクルマによって有無があり、要不要はユーザー任意だ。 フォグランプ……道路運送車両法の保安基準では「補助灯」のひとつに位置付けられ、日本語&法規上では「霧灯(むとう)」と呼んでいる。 ただ、腑に落ちない点もある。 昔はフォグランプといえば黄色だったもので、そうと知った目で周囲を見渡せば、いまはヘッドライト用と同じ白のフォグランプのほうが多い。上下に薄く、横広がりの光で照射するものとまでは知っているが、黄色はともかく、同じ白でもヘッドライトの白光とは光の性質が何か違うのかと思えば、用品店ではヘッドにもフォグにも使えるランプも売っていたりするからよくわからない。その傍ら、「日本のクルマの『フォグランプ』は『フォグランプ』とはいえないもので、日本のやつは『ドライビングランプ』だ。」というひともいる。 「いったい『フォグランプ』とは何ぞや?」となってくるわけだ。 今回は、前回の「ラウンジ」で触れた「最新オートライト」の話の続き。ライトつながりで「フォグランプ」をテーマにする。 保安基準に記されている「フォグランプ」の定義と規定 フォグランプ、すなわち「前部霧灯」は、道路運送車両法の保安基準のなかで「濃霧そのほかの視認性が低下する状況が発生した場合に、自動車の前方の道路上の照度を増加させることを目的とした灯火装置」と定義されており、取り付けその他についても規定がある。 次のとおりだ。 ・数は2個でなければならない。ただし、同時に3個以上点灯しない構造であればこの限りではない。 ・色は白色または淡黄色であること。 ・取付位置は照明部の最外縁が自動車の最外側から400mm以内、高さは照明部の上縁が地上800mm以下であること。 ・照射範囲は上方5度および下方5度、外側45度および内側10度。 ・点灯していることが運転席からわかる装置を備えていること。 ・単体で点灯できない構造であること。 など。 400mmだ、800mmだ、5度だの45度だの10度だのと、「何もそこまで決めなくても」といいたくなるほど事細かな決まりがあるが、内側10度はともかく、上下5度ずつ、外側45度から、やはりさきの「上下に薄く、横広がりの光」は正しいことがわかる。 このあたりを実車に当てはめると次の写真のとおりとなる。 おもしろいというか、奇妙なのは個数だ。一見、3個以上取り付けてはいけないように思えるが、同時に3個以上点灯しないことを満たしていれば灯体自体は何個つけてもかまわないのだ。したがって、前面にずらりと並べたところで違法改造にはならない。 また、フォグランプの点灯状態が運転席からわかるようになっていなければならないのと、フォグランプは単体で点灯できない構造でなければならない。だからすべてのランプが消灯しているときにフォグランプスイッチだけONにすれば、同時にスモールランプも点灯する。フォグスイッチをOFFにするとスモールも消灯。このあたり、メーカーや時期によって考え方が異なっていて、ヘッドライトスイッチがスモール以上になっていないとフォグスイッチを入れてもフォグががつかないクルマもある。 操作法はどうであれ、すべてのランプが消灯のままフォグランプだけが点灯することは、構造上できないようにしてある・・・あるのだが、前回「最新オートライト問題点」記事で触れたように、いまの新車は事実上、夜間走行ではライトが自動点灯するのでフォグ+スモールだけで走ることはできない。役人や官僚は東京にいるがために、たぶん日常的にハンドルを握らないのだろう、ほんとうは、濃霧ではヘッドライト光が乱反射して目の前は真っ白、かえって視界が失われるので、場合によっては速度を落とすと同時にフォグ(とスモール)だけでゆーっくり走るほうがいい場合もあるのだが、それを知らない彼らは「前照灯」の項だけに目を向けたがために(?)、現状、「前部霧灯」の項との整合が取れていない。 使うのは、いつならいいのかフォグランプ 役人の見落としはともかくとして、本来、フォグランプはいつ使うのか? 2024年にもなってこんなことを書くのは情けないのだが、いまだに間違った使い方をしているクルマが多いのであらためて書く。 そんなもん答えは簡単で、霧に出くわしたときに使うのだ。メーカーによって表現は異なるが、取扱説明書には、 「霧などで視界が悪いときに使う」 「・・・霧や雨、雪など、悪天候時に使用」 と記載されている。 にもかかわらず、霧も出ていないのに点けて走っているクルマをしょっちゅう見かける。「わたし、『fog(霧)』『lamp(灯火・ランプ)』の意味を理解していません。コリャコリャ。」と自ら露呈しているようなものだ。対向車はまぶしくってしょうがない。 もっと迷惑なのはリヤフォグランプだ。 晴天下(夜の話ね)のフォグランプ点灯の対向車は迷惑だが、どうせすれ違うまでのがまんだ。ところがリヤフォグランプを点けたクルマが自分の前に来たが最後、ストップランプ並みかそれを超える大光量の赤いビカビカ光を、はぐれるまで目にしなければならない。これが一般路なら右左折するなどして逃げることができるが(何でこちらが予定外の道に逃げなきゃならないのかと腹は立つが)、これが夜の高速道路の直線区間となるともうだめだ。ひとり淡々と走っているとき、自分を追い抜いたクルマの後ろでリヤフォグランプが灯っていると、奴がはるか先、道向こうに消えるまでの間、苦痛に耐えなければならない。リヤフォグであれ対向車のハイビームであれ、その光がたとい点のように見えるほど遠方からのものだとしても、目にする者にとってはかなり強烈な光だ・・・同じ思いをしているひとは結構多いと思う。こんな目くらまし行為、危険の誘発なのだから、警察だって取り締まるべきだ。 ことのついでに、リヤフォグランプ・・・「後部霧灯」の法基準も、抜粋しながら記載しておく。 ・自動車の後面には後部霧灯を備えることができ、霧などにより、視界が制限されている場合において、自動車の後方にある他の交通からの視認性を向上させ、かつ、その照射光線が他の交通を妨げないものとして、灯光の色、明るさなどに関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。 ・光源は35W以下で、照明部の大きさは140cm2以下であること。 ・色は赤色であること。 ・数は2個以下であること。 ・1個の場合は後部霧灯の中心が車両中心面上またはこれより右側の位置になるように取り付けられていること。 ・後部霧灯の照明部は、制動灯の照明部から100mm以上離れていること。 ・後部霧灯は、前照灯または前部霧灯が点灯している場合のみ点灯できる構造であり、かつ、前照灯または前部霧灯のいずれかが点灯している場合においても消灯できる構造であること。 ・後部霧灯の点灯操作状態は運転者席の運転者に表示する装置を備えること。 など。 メーカーの責任ではないが、フォグランプスイッチの場所も災いしているかも知れない。最近のクルマのフォグスイッチは、ライト/ターンシグナルスイッチレバー軸に、指輪の様にリング状で巻き付いているものが多い。上向き操作でフロントフォグ、リヤフォグ付車なら下押しでリヤフォグというぐあいだ。中にはレバー上でシーソー型になっているものもある。右左折時にうっかり手を触れてONになったことに気づかず点けているひともいるのではないか。 私が初めてリングタイプを見たのは日産車で、ライト関連をレバーに集約したのはいいアイデアだと思ったが、もしよく触れる部分にあるがために無意識で誤操作してしまっているひとがいるなら、どこか外側に追いやる検討が要るも知れない・・・のだが、そもそも運転者がいまの状態を常に認識していないのがいけないのだから、自動車会社にそんなことを強いるのは筋が違うとも思う。 とにかく! フォグランプは晴れたときには不要不急(めっきり聞かなくなったね)のランプだ。状況に応じてきちんとON/OFFを心掛けて使うべし。相手を幻惑させるばかりか、車両前方の、たとえば歩行者の存在を余計な光でかき消してしまう「蒸発現象」をも引き起こすことになりかねない。
山口 尚志