旅する本屋お勧めの「車中泊で読みたい本」
車中泊をする静かな夜には本を読もう。旅に関する本を扱う書店の店主に車中泊で読みたい名著を伺った。 【関連画像】旅する本屋お勧めの「車中泊で読みたい本」 ■約1400冊の旅にまつわる本が並ぶ「街々書林 Books & Gallery」 街々書林 Books & Gallery 「旅先への興味と敬意を持っていたい」という思いから、2023年6月に旅に関する本を集めた人文系書店としてオープン。さまざまな旅の本と出合える。 街々書林 店主 小柳 淳さん 東京都武蔵野市吉祥寺本町3-3-9 営業時間/12:34~18:00 定休日/月・火曜、年末年始 アクセス/JR「吉祥寺駅」より徒歩約8分 八百屋、輸入雑貨店、カフェなどこれぞ「吉祥寺」というような個性あふれる店が並ぶ中道通りに、2023年6月にオープンした「街々書林」。途絶えることなく客が訪れるこの店の店主・小柳さんは、明るく親しげに客を招き入れる。 旅に関する本を集めた同店のコンセプトは「旅先への興味と敬意」。せっかく訪れるのであれば、できるだけ事前に下調べをしておきたい。そんな小柳さん流の旅先への「敬意」から、この旅する本屋は生まれた。 旅に特化したこの店には、参考書もビジネス書もない。「代わりにそのスペースに、旅に関する変わった本、面白い本が置けます」と小柳さんは話す。 この店では客はただ棚の本を眺めるだけではない。「旅の本のコンシェルジュ(小柳さん)」が繰り広げるトークにも、思わぬ本との出合いがある。 本と人が偶然出合う、ネット上では難しいからこそ小柳さんはリアル書店にこだわったそうだ。本屋であり、カフェやバーのように人が集い、交流する場所──それが「街々書林」なのだ。 ■■小説 ●名文が踊る夏目漱石初期の傑作『草枕』夏目漱石 新潮文庫 473円 山で出会った謎の美女を描こうとする青年画家の探究を描く。「熊本の山の中を歩く中で、美術と文学を重ねたような名文とドラマチックな展開は何度読んでも飽きません」。 ●『星の王子さま』著者の名作『夜間飛行』著/サン=テグジュペリ 訳/堀口大學 新潮文庫 605円 航空黎明期の「夜間郵便飛行」に挑む者たちの物語。「代表作『星の王子さま』とは異なり、ストイックで、自然の恐ろしさや美しさ、人間の気高さに驚かされます」。 ■■写真集 ●昭和末期のローカル線を映す『旅のたまゆら』寺下雅一 現代書館 4950円 昭和の終わりの地方社会と鉄道を捉えた写真集。「鉄道風景の写真集ですが、駅やその周辺で働く人々の表情など鉄道ファンだけでなく旅好きな人の心にも刺さる本だと思います」。 ●心の荷を解く小さな仏の姿『てのひらの みほとけ』序文/高橋睦郎 訳/マイケル・ジャメンツ PIE International 1650円 掌に収まるサイズの仏像46体を収録。「念持仏など、ポータブル仏像ともいえる仏たちの写真と簡単な解説や和歌なども載っていて、ボーッと眺めるのに最適です」。 ■■エッセイ ●現役パイロットが紡ぐ空への憧れ『グッド・フライト、グッド・ナイト パイロットが誘う最高の空旅』著/マーク・ヴァンホーナッカー 訳/岡本 由香子 早川書房 968円 パイロットが語り尽くす空と飛行機にまつわるロマン。「雲の形、海の色の変化などを綴った美しいエッセイ。技術論ではないので読みやすく旅にぴったりです」。 ●チェコの人気作家が見たスペイン『スペイン旅行記』著/カレル・チャペック 編訳/飯島 周 ちくま文庫 858円 チェコ人ジャーナリストの旅行記のスペイン周遊編。「鋭い着眼点、深い洞察力を感じる反面とても楽しそうに旅や植物への関心を綴っていてただただ楽しい」。 ■■実用書 ●生粋の境界マニアが世界を紐解く『奇妙な国境や境界の世界地図』著/ゾラン・ニコリッチ 訳/松田和也 創元社 2750円 世界の複雑な境界線を集めた世界地図集。「海や山の中、さらに飛地まで存在する訳ありで不思議な境界線をビジュアルで紹介していて、就寝前にお勧めです」。 ●歴史と文化を形作った言語集『図節 世界の文字とことば』編/町田和彦 河出書房新社 2090円 世界から45言語を選び、文字の面白さを伝える。「文字をグラフィックからアプローチ。また、文法の類似性などを平易明快に解説していて読みやすいです」。 ■■一人の世界に没入できる物語 ●日本SF界屈指の宇宙叙事詩『百億の昼と千億の夜 完全版』著/萩尾望都 原作/光瀬龍 河出書房新社 2750円 神の名前を冠した登場人物たちを壮大なスケールで描いたSF漫画作品。「読んでいくプロセスに意味がある、まさに余計なことを考えずに没入できる作品です」。 ●生物学者と謎のキツネの日々『キツネとわたし──ふしぎな友情』著/キャサリン・レイヴン 訳/梅田智世 早川書房 3630円 生物学者の前に突然現れた不思議な雰囲気を持つキツネ。「かなり詩的な作品で、頭で理解するというより生き物との関わりに思いを馳せることができる本です」。