【ONE PIECE考察】アーロンの嘘、オロチの悪政、くまの過去……忘れられない胸糞エピソード5選
※本記事は本誌最新話の内容に触れる部分があります。 現在『ONE PIECE』本誌では、バーソロミュー・くまの過去が描かれている。読者の間では、そのエピソードが残酷すぎると大きな話題になった。 【写真】日本人形の老舗が作った『ONE PIECE』フィギュアが凄すぎる 『ONE PIECE』では過去にも、読むだけで心が痛むストーリーがいくつか繰り広げられてきた。そこで今回は本作で描かれた胸糞エピソード5選を、ワンピース研究家の神木健児氏に聞く。 「まず初期の頃で衝撃だったのは、アーロンの悪行ですよね。アーロンはナミが住んでいたココヤシ村にやってきて、金を納められなかったベルメールを殺しています。そしてナミに約束したにもかかわらず、最後は金を取りあげすべてを台無しにしました。幼気な少女に金を盗ませてくるだけでもとんでもないのに、最後は約束さえも守らなかったですからね。自分の手を汚さなかったのも、めちゃくちゃ胸糞だなと思います。母を殺された組織に従わせて、利用した後に裏切るのはまさに外道ですね」 残酷なエピソードは、新世界に入ってからも描かれた。 「やっぱり子供にひどいことをするのは、読んでいても心が痛みます。そういう意味では、パンクハザード編のシーザー・クラウンにはめちゃくちゃ腹が立ちました。シーザーは本物のマッドサイエンティストで、ビッグ・マムから人工で巨人を作る研究をするよう依頼されていました。その研究に利用していたのは、全員が誘拐してきた子供。そして彼は子供たちに、ドラッグを服用させていたのです。何も知らない子供たちは、1度逃げ出しても中毒症状でシーザーのもとに帰ってしまいました。こんなのもし現実で起きたら、トップニュースになるレベルですよ。この話を読んでいたときは、本当にシーザーは人の心がないんだなと思いましたね」 『ONE PIECE』では、「国」が重要なポイントとなっている。 「『ONE PIECE』の世界には、優秀で真面目な王が何人か存在します。そのなかでも、リク王はトップレベルで優しく優秀、国民に信頼された王でした。しかし突如国に帰還したドフラミンゴの登場で、その平和な日々は一変します。ただ国を乗っ取り暴力で支配するのは、海賊っぽいですよね。しかしドフラミンゴは、そうはしませんでした。信頼されていたリク王を悪者に仕立て上げ、真犯人である自分を救世主であるかのようにみせます。そして国民の愛や信頼すらも奪い、本当の意味での支配者になりました。裏では国民の一部をおもちゃに変え働かせていたりと、めちゃくちゃです。シュガーの人の存在を消してしまう能力も相まって、ドフラミンゴの行いは本当に胸糞でしたね」 リク王は素晴らしい王だった。しかし、国のトップに立つ人物が、人格者であるとは限らない。 「最近のエピソードでは、オロチの悪政もひどかったですよね。たしかに黒炭家は迫害されていて、気持ちはわからなくはないんです。ないんですけど、どう考えても振り切ってやりすぎでした。特にえびす町のストーリーは、衝撃でしたね。元々スマイルは能力が覚醒しない可能性があり、失敗すると笑い続けてしまう副作用が発現する危険なギャンブルです。しかしオロチはただスマイルを食べさせるのではなく、副作用しか残っていないデメリットのみのスマイルを町民に食べさせていました。どんなに悲しいことが起きても笑い続ける人々は、本当にみているのが辛かったです」 5つの物語を選ぶうえで、やはり最新エピソードは入れざるを得ないと神木氏は続ける。 「胸糞エピソードとして外せないのは、結局最新ストーリーであるくまの過去編でしょう。そのなかでも、ベコリ王の行いは凄まじかったですね。ベコリ王はくまが青年だった頃のソルベ王国国王で、高い天上金を払わせる非情な人物でした。そして彼は南北で国を分け、天上金が少ない老人が多く暮らす南側の人間を、実質的な奴隷にしようとします。ベコリ王は天上金や奴隷制度など、天竜人を真似た政策をしていました。天竜人が嫌いな読者としては、顔をみるのも嫌でしたね」 『ONE PIECE』には多くの悲しいエピソードがあるが、それらをすべて解決してきたのがルフィだ。最新話で壮絶な過去が明かされているくまやボニーも、彼が救ってくれるのか。今後の展開からも、目が離せない。
青木圭介