中国との対話探るも「前提」認めず 国民党の対中接近に警戒 台湾・頼清徳政権の行方(上)
20日に総統の就任式が行われ、4年間の台湾のかじ取りを託された頼清徳政権の行方を占う。 【比較してみる】中国と台湾の軍事力 ■人事にも柔軟姿勢 「相互尊重の原則を基に、前提を設けずに中国と対話することを排除しない」 総統の就任式を約1週間後に控えた台湾の頼清徳氏は14日、デンマークで開かれた「コペンハーゲン民主主義サミット」にビデオメッセージを寄せ、「中国との対話の可能性」について改めて強調した。 若い頃から台湾独立運動に参加し、対中強硬派といわれる頼氏だが、1月の総統選で当選した後は中国との対話に繰り返し意欲を示し、柔軟な姿勢を見せている。 それは新政権人事にも見られた。 台湾の対中交渉窓口機関である「海峡交流基金会」の新しいトップに、有力政治家の鄭文燦(てい・ぶんさん)前行政院副院長(副首相に相当)が任命された。サプライズ人事とされた。 同基金会は李登輝総統時代の1990年に発足した半官半民の団体で、初代理事長は李氏の側近で大物財界人の辜振甫(こ・しんぽ)氏が務めた。しかし、蔡英文前政権下では官民いずれのルートでも対中対話が途絶え、基金会の存在価値が薄れた。トップの理事長職には近年、学者や元官僚ら政治への影響力が小さい人物を充てることが大半だった。 将来の総統候補といわれる実力者の鄭氏を、閑職とされてきた基金会の理事長に起用した。中国との当局間対話が難しい中で、基金会を通じて民間交流を活発化させ、鄭氏の突破力で中国との関係を改善したい-。こんな頼氏の意図が見え隠れする。 「鄭氏と中国側の交渉を通じ、中台のトップ会談を実現させたい」と、頼氏の意図を証言する与党・民主進歩党の関係者もいる。 ■民進党も対立望まず 頼氏が中国との関係改善を急ぐのには理由がある。 中国の習近平政権は最近、台湾の最大野党・中国国民党と急接近している。中国は4月上旬に国民党の馬英九元総統の訪中を受け入れ、習国家主席との会談も行われた。 4月下旬には、立法院(国会)の国民党トップである傅崐萁(ふ・こんき)氏が率いる17人の同党議員団の訪中を受け入れた。その際、中国側は4月初めに発生した台湾東部沖地震での物資支援や、中国人観光客の台湾訪問について一部規制の緩和を発表し、国民党に花を持たせた。