あえて日本の狭小アパートで、カリブ海出身の32歳男性は「経済的自立」を目指す(海外)
極小のアパートを家にする
ラジュアン氏の極小アパートの家賃は3万2420円、およそ230ドルだ。最寄りのコンビニまでは歩いて3分、地下鉄の駅までは5分でたどり着ける。 以前住んでいた富士市とは異なり、今の場所は日本人だけでなく外国人も多く暮らしている。 「初めに住んでいた富士市は田舎で、ドレッドヘアの私はとても目立っていた」と彼は言う。「それに対して、今住んでいるここでは、すぐ隣は日本人女性だが、その隣はインド人の夫婦だ」 にぎやかな東京や京都とは違って、その中間に位置する名古屋は少しのんびりしているそうだ。 東京は日本で最も人口が多い。およそ970万人が暮らしている一方で、名古屋市は233万人、京都市は146万人だ。 「東京は本当に狭く感じて、人の多さに圧倒されるが、名古屋は都会の生活と個人のスペースという意味で絶妙なバランスにあると感じる」と彼は付け加えた。 また、彼にとってはゆったりとした、意識的な生活を送るのにも最適な場所だった。
改善の手段としてのシンプルさ
日本にやってきったとき、最初に住んだ場所はトリニダード・トバゴで暮らしていた家よりもさらにミニマルだった。 トリニダード・トバゴでは、今よりもはるかに広い家に住んでいたが、個人的にはカップと皿をそれぞれふたつずつしか所有していなかった。客が来るたびに、その理由を尋ねられたそうだ。 「自分はひとりしかいないので……必要なものをふたつずつ。本当にそんな風に考えていた」とラジュアン氏は言う。 だが、そのような考え方をライフスタイルとして意識するようになったのは、トリニダード・トバゴに帰国していたころに友人に紹介されて、Netflixで『ミニマリズム(Minimalism)』というドキュメンタリーを観てからだった。 「そのようなムーブメントが存在することは知らなかったが、観たあとには共感を覚えた」とラジュアン氏は説明する。「どんな人生にしたいかと考え、純粋な意図だけにもとづいて生きていこうと思った」 そのライフスタイルには質素に生きることも含まれる。そうすることで経済的自立を手に入れるのである。そして、その手段のひとつが極小のアパートなのだ。 「私は経済的自立を目指している。これは、平穏を求めているということだ。金銭面で重荷を背負いたくない」としたうえで、同氏はこう続けた。「望めばもっと広い部屋に住むこともできたが、ここなら収入の25%以下で暮らすことができる」 言い換えれば、パートタイムの英語教師職がなくなった場合などに必要となる生活防衛資金を確実に維持できる、ということだ。 「私にとって多くの価値をもたらすものにはしっかりとお金をかけ、私にとって価値をもたらさないものにはお金を使いたくない」と彼は言った。「今のところ、仕事、友人、そして家族が何より重要。そういったことに尽くすのに、多くのお金は必要ない」 ミニマルな生活のおかげで、自分が人生から何を求めているのかがはっきりとわかっただけでなく、生産性も向上した。気が散る要素が少ないからだ。 「以前仕事をしていた場所に比べて、ここでは驚くほど生産性が高まった」とラジュアン氏は言う。「先延ばしにするとしても5分程度。それだけだ。ベッドから起きれば、コンピューターが私を見つめている」